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※麻酔科は
- 脳死判定医として、あるいは
- 臓器摘出術の呼吸循環管理医のいずれかとして臓器提供に関わる。
- 脳死判定医はドナー管理を行なってはならない!
□臓器摘出術の管理・手順:総論
◯準備する薬剤(一例)
- 筋弛緩薬(ロクロニウムなど)
- メチルプレドニゾロン(1g程度)
- ヘパリン(遮断前に使用)
- PGE1製剤(肺摘出が予定されている場合)
- 昇圧薬(DOA、DOB、AD、NAD、ADHなど)
- 抗生物質
- 輸血、5%アルブミン製剤、細胞外液
◯摘出する順番
①心臓⇒②肺⇒③小腸⇒④肝臓⇒⑤膵臓⇒⑥腎臓⇒⑦(承諾があれば眼球や皮膚)
※麻酔科(呼吸循環管理医)の仕事は大動脈遮断、肺摘出がある場合は気管切断時まで。
◯管理方法
- 麻酔薬は一切不要。血行動態の変化に対しては昇圧薬や降圧薬、輸液・輸血を使用。
- 筋弛緩薬は使用する。これは脳死状態でも脊髄反射は残存しており、侵害刺激に対して血圧上昇や心拍数の上昇、体動が生じうるため。
- モニターには輸液管理などの指標として動脈ライン、中心静脈ラインを使用。フロートラックやプリセップカテーテルが望ましい。
- 麻酔薬を使用すると、臓器移植を反対している人々は、「麻酔薬を使用するということは、脳死ではなかったのではないか」と主張している。
- オピオイドは主たる作用部位が脊髄のため、脊髄反射の抑制には有用であると考えられるが、「鎮痛」という意味ではない。そのため、非医療者からは「痛い」ので「鎮痛薬」を使用しているとの誤解を与えるため使用すべきではない。
- 脳死になるとADHが分泌されなくなることに加え、延髄の血管運動中枢も働かなくなるため血圧は低下する。そのため、血液の酸素化を維持しつつ臓器の血流を維持する必要がある。血圧を維持するために抹消血管抵抗を増加させると摘出臓器の血流が維持される保証がないため、血圧低下に対しては輸血による容量負荷で対処するのが望ましい。しかし、肺が提供される場合には、過度の晶質液や膠質液の投与は推奨されない。
- 大量のカテコラミンの使用は心筋障害の原因ともなるため、ADやNADの使用はできるだけ控えたい。これはADHを補充することで減らせる。0.2U/kgのボーラス投与後に0.1〜0.2U/kg/hrで持続投与し、SBP90mmHg以上と1〜2ml/kghr程度の尿量を目標に調節。大動脈の遮断時まで続ける。
□臓器摘出術の管理・手順:各論
◯摘出術前のミーティング
- JOTNCo(手術室・摘出術担当)、提供施設スタッフ(医師・看護師など)、呼吸循環管理医(多くは提供施設の麻酔科医)と各臓器の摘出チームが集まる。
- 摘出臓器、摘出医の確認、臓器摘出の手順、臓器の灌流法やドレナージ(カニュレーションの種類と位置など)の方法、血管切断の位置確などを確認する。心臓、肺の摘出があるかどうかで方法が異なる。
◯管理の手順
- ドナーの搬入。除神経の状態であるため、体位変換や腹部圧迫で血圧が変動しやすいため、移動は慎重に行う。
- モニターは上記のように通常モニターに加え、観血的動脈圧測定、中心静脈圧測定。フロートラックやプリセップカテーテルは有用。
- 中心静脈ラインは術中に抜去するので、糸固定は外しテープで固定しておく。
- 除細動パッドと体外ペーシングの準備。
- 人工呼吸器はPaO2を100〜150mmHgで維持できるように設定(多くは40〜50%で可能)。肺摘出の予定であれば肺保護目的の呼吸管理を行うので、肺摘出チームとも協議しておく(肺の摘出がなければ酸素濃度は100%のままでもよい)。PaCO2は40mmHg程度を維持できるように。IVC周辺の操作で空気を引き込むことがあるので、PEEPも適宜使用(5〜10cmH2O程度。肺摘出がある場合は3〜5cmH2O程度で)。
- 摘出術開始時にメチルプレドニゾロン1gと筋弛緩薬を投与。
- 低血圧への対処方法はまずは血管内ボリュームの維持。輸血やアルブミン、膠質液などを使用。昇圧薬としてはカテコラミンなどを使用するが、少なめで。ADHの投与も継続してよい。上下大静脈の剥離、肺の剥離時に大量出血や血管圧迫などで血圧が低下しやすいため、術者に適宜注意喚起しつつ、適切な管理を行う。
- 心臓の剥離操作中には頻脈・徐脈ともに起こりやすい。急激な徐脈には体外ペーシングや術野での直接ペーシングを行う。アトロピンは無効である。
- 心房細動、心室細動では除細動パッドあるいは術野でのパドルによる除細動を適宜行う。
- 体温管理では冷却・加温両用マットを使用する。大動脈遮断が完了するまでは中枢温を35度以上を保つように。Bair Huggerなどの温風式加温装置は術野との関係上使用できない。大動脈遮断が完了すれば、輸血・輸液の停止、加温装置は冷却に切り替え、部屋の暖房も停止する。
- 摘出の準備が整えば中心静脈ラインよりヘパリンを投与(400〜500単位/kg)。ACTの確認は行わなくてもよい。ここまでに肺動脈には肺灌流用のカテーテルや腹部臓器のカニューレが挿入されている。ヘパリン投与後に上行大動脈にカニュレーションを挿入。
- すべての準備が整えば呼吸循環管理医は中心静脈カテーテルを抜去し、上大静脈、下大静脈を結紮、心臓が虚脱すれば上行大動脈を遮断し、心停止液の灌流を開始し、心臓・肺摘出を行なっていく(両チーム連携)。
- 肺の摘出予定があれば気管切断までは呼吸を継続(良好な術野を維持するため換気量や回数は減らす)する。気管切断時点で呼吸循環管理医の仕事は終了。
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