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2012年12月20日木曜日

脳死判定・脳死下臓器移植関連:その⑥【摘出術前までのドナー管理】

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□脳死後の主な生理学的変化
◯脳:頭蓋内圧の上昇、壊死
◯甲状腺:TSHの低下によりT3、T4の低下が見られることがある。
◯肺:肺炎、無気肺、ARDS、神経原性肺水腫などによる低酸素血症
◯肝臓:炎症性サイトカインの放出による障害
◯心血管系:急性期にはカテコラミン放出による異常高血圧(交感神経ストーム)が生じる。その後血管運動中枢の機能消失による血管抵抗の低下、自律神経反射の消失、収縮能の低下(ない場合もある)による低血圧が生じる。
◯腎臓:低灌流や薬物による尿量減少、または尿崩症による尿量増加の両方の可能性がある
◯その他高血糖、低体温、全身性炎症反応の上昇や脱水、電解質異常は敗血症が見られることがある。




□実際のドナー管理総論(ICUにて)

  • 脳死判定前は、脳機能の回復と救命のための処置。判定以後は全身状態の安定と移植可能臓器数を最大し、移植後機能を良好ににするための管理を行う
  • 原則としてドナー臓器の機能を温存するための管理は、2回目の法的脳死判定が行われ、かつ家族の臓器提供への同意が得られてから開始する。
  • 臓器摘出術は法的脳死判定終了後数時間〜数日以内に多くが行われる。ドナーの全身状態が安定していれば摘出の時期を遅らせるメリットはない。全身状態が不安定であれば安定化のための時間を取ることは必ずしもデメリットとはならない。
  • MCは現時点でどの臓器が移植可能であるかを評価するとともに、呼吸循環動態を評価し、カテコラミンなどの強心薬の使用をできるだけ行わずに血行動態を安定化させるよう努める。


□実際のドナー管理各論
体温管理

  • 視床下部の体温中枢の機能が消失
  • 上記に加え末梢血管抵抗の減弱(血管拡張)や代謝の低下により低体温になりやすい
  • 積極的な加温が必要であり、中枢温度35度以上を維持する。

内分泌系

  • ADHの不足により尿崩症をきたしやすい(脳死患者の65%程度)。
  • 尿崩症の治療が早期に開始されないと高Na血症をきたし、155mEq/l以上になると肝臓移植、膵臓移植の成否に関わる可能性あり。130〜150mEq/l程度に補正する。
  • ACTHも低下しており、それを補う目的と、肝臓や心臓、腎臓を始めとする全身性の炎症反応を抑制する目的で副腎皮質ステロイド(メチルプレドニゾロンなど)の投与が行われる。日本ではメチルプレドニゾロンを1gボーラス投与される。その他ステロイド投与は、酸素化の改善や、肺血管外水分量の減少と関係している。
  • 甲状腺ホルモン(T3,T4)の有効性は示されていない。
  • 脳死後はインスリン抵抗性が増大し、インスリン分泌量は減少するため高血糖の頻度が高い。ステロイド投与はこれを悪化させる。血糖管理の不良は移植成績を悪化させると言われており、血糖値は80〜150mg/dlでコントロールする。


循環管理

  • 臓器の血流を保つのが重要。そのため動脈ライン、中心静脈ラインを留置する。肺動脈カテーテルは賛否両論あり。収縮力低下(EF40%未満)症例や心臓移植予定の場合は考慮される。
  • 平均動脈圧の目標は70mmHg以上、C.I2.4以上、ScvO2:60%以上、SVR:800〜1200dynes/s/cm5を目安にカテコラミンなど使用。0.05γ以上のノルアドレナリンは移植心臓の機能不全、移植後早期の患者死亡と関係するので使用をできるだけ控える。
  • 臓器血流を悪化させるため、脱水は絶対に避ける。CVP、PCWPを6〜10mmHg程度を目安に十分に輸液(輸血)する。輸液製剤による差はないらしい。
  • 晶質液の大量使用で高ナトリウム血症やアシドーシスの可能性あり。HESは移植臓器の機能回復を遅らせる可能性があるらしい。
  • 基本的にはHb9〜10g/dl程度を目安にRCC輸血を行う。臨床的出血傾向があるようであればFFPやPCも考慮する。
  • 尿崩症を発症していなくても、ADHの持続投与は血管抵抗を保ち(低血圧に有効)、カテコラミンの使用量を減らすことができるため有効であると考えられている。使用量は1〜2U/hrで開始。
  • 脳死急性期はカテコラミンの放出により異常高血圧を示すことがある。この反応を上手に抑えると心臓の移植率が上昇するらしい。
  • 弁疾患はエコーで評価可能だが、冠動脈の評価は検出が難しいため高齢者などでは冠動脈造影が考慮される。


呼吸管理

  • 痰の貯留や無気肺による肺炎が高頻度で発生
  • 神経原性肺水腫やARDSによる低酸素血症が進行することもある。
  • 呼吸管理はARDSに準じて行う。酸素濃度は低めに抑え、SpO2は最低95%を維持。
  • 吸痰(適宜気管支ファイバーなどを用いて)を行い、吸引後はしっかりとリクルートメントを行う。
  • 肺炎を発症した場合は広域の抗生物質を使用。予防的抗生物質の投与は原則行わない。
  • 適切なモニタリング下で過剰輸液を避ける


肝臓

  • 脳死後の血行動態の変化、それに続く全身性の炎症反応により肝障害が起こることがある。サイトカインの放出は肝移植後の肝機能不全に関与する。ステロイドが投与される。

腎臓

  • 水分バランスを適切に保ち、尿量を維持する。目標は0.3〜0.5ml/kg/hr。
  • 十分な輸液にもかかわらず乏尿であればフロセミド投与を考慮してもよい。
  • 少量ドパミンの使用は賛否あり。用いるにしてもできるだけ低容量で。
  • 65%程度の症例では尿崩症を発症する。4ml/kg/hrを超える場合はADHを投与する。水分バランスが適切に維持されていればADHの適度な仕様は臓器灌流を悪化させない。


栄養療法

  • 基本的にそれまで行われていた栄養療法は継続する。
  • 経腸での栄養管理が望ましい。
  • 中心静脈栄養を新たに開始する必要はないが、輸液は糖分が含まれているものにする。




□補:ドナー評価のための各種検査

  • 脳死完成時の血行動態(心肺蘇生の有無)
  • 感染症などの禁忌事項のないことの確認
  • 血行動態の解析(使用カテコラミン、血圧、CVP、尿量など)
  • 胸部・腹部レントゲン
  • 心電図、心臓・腹部エコー
  • 気管支鏡検査
  • 血清電解質や酵素など
  • 感染症検査(痰・尿などの培養検査)
  • 胸腹部CT検査(可能ならば)








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