43回麻酔科専門医試験：口頭試問 症例4

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5歳の男児。身長110cm、体重17kg。左外斜視に対して外直筋後転術が予定された。風邪を引きやすいが、現在発熱や咳などはなく、極少量の水溶性の鼻汁のみを認める。

質問

１）術前評価と管理
①この患者の術前状態における問題点を、重要と思われる順に列挙してください。
②術前の問題点をさらに評価するための病歴、身体所見について述べてください。
③そのまま麻酔を引き受けますか？
④術前経口指示、前投薬について述べてください。
２）麻酔法および術中管理
①麻酔法について述べてください。
②麻酔導入はどのように行いますか。具体的に述べてください。
３）術後管理
術後悪心・嘔吐（PONV）について述べてください。
４）周術期危機管理
手術開始直後、心拍数30回/分の徐脈となり、収縮期血圧40mmHgに低下した。
①考えられる病態について述べてください。
②処置について述べてください。







１）術前評価と管理
①この患者の術前状態における問題点を、重要と思われる順に列挙してください。
・極少量の鼻汁。
・外斜視手術⇒PONVが好発
②術前の問題点をさらに評価するための病歴、身体所見について述べてください。
・最近の風邪症状の有無、活動度
・喘鳴の有無
・保育園や幼稚園での流行疾病の有無
③そのまま麻酔を引き受けますか？
・特に他の症状がなく、慢性に少量鼻汁があるのみであれば引き受ける。
・いつも症状がないのに、鼻汁が出てきたばかりであれば、このあと増悪する可能性があるため、延期してもよいかもしれない。
④術前経口指示、前投薬について述べてください。
・ミルクや固形物は８時間前まで（午後からの症例であれば、消化の良いパンと清澄水を食べさせる施設もあり）。
・清澄水は２〜３時間前まで。
・前投薬は個々の施設で決められたものを決められた用量で・・・・（今度一般的なものをまとめます・・）
２）麻酔法および術中管理
①麻酔法について述べてください。
・気管挿管による全身麻酔
（LMAでする施設もあり）
②麻酔導入はどのように行いますか。具体的に述べてください。
・静脈ラインが確保されていれば、ミダゾラム、ロクロニウム、少量フェンタニルで導入。
・なければセボフルラン、笑気、酸素による緩徐導入。
３）術後管理
①術後悪心・嘔吐（PONV）について述べてください。
●PONVの危険因子
・女性
・乗り物酔いが強い
・非喫煙者
・脳外科手術
・長時間手術
・PONVの既往
・オピオイド、亜酸化窒素、揮発性麻酔薬、ネオスチグミン）
手術：斜視、腹部、乳房、耳鼻科、脳外科、腹腔鏡手術）　
●術後にPONVの起こる危険性の程度
危険因子が0個、１，２，３，４個あると、10、20、40、60、80％なると言われている。ただしエビデンスレベルは高くない。この患者では４つあるため80％とかなりの高率で起こる可能性がある。
・挿管前にリドカイン静注（1.5mg/kg程度）すると、PONVの頻度が16-20%に低下
など。
（これについても今後まとめます）
４）周術期危機管理
手術開始直後、心拍数30回/分の徐脈となり、収縮期血圧40mmHgに低下した。
①考えられる病態について述べてください。
・眼球心臓反射による徐脈、低血圧と考えられる。
②処置について述べてください。
・術者に伝え、手技を中止ししてもらう。
・アトロピン静注（0.01mg/kg）
・浅麻酔を避ける。など