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2016年10月8日土曜日

体験談㉞(第55回麻酔科専門医認定試験)




【はじめに】
今回、salaryman-anesthesiologistの青本のおかげもあって、無事に3科目とも合格することができました。麻酔科専門医試験は個々の自学自習はもちろん相当量必要ですが、周りがやっていることを当たり前のように自分も抑えておく、情報戦だと思います。

日々の臨床業務も忙しく、限られた時間の中で合格をつかみ取るには、効率的な勉強が必要です。青本は必要な事がコンパクトにまとまっているので大変重宝しました。
今回の受験を通じて自分が実際に勉強した内容、試験当日感じたことを書き留めておきたいと思います。


【筆記試験】
・勉強方法
 筆記試験に関しては4月くらいから、過去問7年分を間違えなくなるまで5周くらいしました。1周目は1冊解くのに1週間くらいかかりました(日々の業務の合間や土日に解きました)が、2周目以降は明らかに正解できている問題は飛ばすので、あまり時間はかかりませんでした。

 歴史の問題は完全に無視しました。計算問題は一応解けるようにしました。取っつきにくいですが、そんなにパターンはないので、抑えておいて損はないと思います。
 自分でまとめノートを作る人もいましたが、その時間と手間が惜しかったので私はしていません。ちなみに、私は筆記試験に関しては過去問だけ勉強して、あまり青本は使いませんでした()

・試験について
 今年からA,B,C問題の配点が変わりました。自己採点はしていませんが、感触的にはA95%B30%C70%くらいの正解率だと思います。全体だと70%くらいの出来でしょうか。あと、全ての問題がX2(エックスツー)X3(エックススリー)に変わったので、運で正解する要素は少なくなりました。マークシートを塗るのに時間がかかるのが少し面倒です。過去問は11つの選択肢について吟味しておきましょう。

 A問題は、7年分の過去問をやっていれば、全て見たことのある問題でした。5年分くらいでも網羅できるかもしれません。ここで失点しないことが筆記試験合格には不可欠だと思います。B問題、とくに前半は見たことのない問題ばかりで笑うしかありませんでしたが、諦めずに最後までたどりつきました。今年は明らかにB問題が難化しており、まぁ誰も解けないだろう、という変な自信を持ってマークだけしました。C問題は例年と同等の難易度でしょうか。より臨床に則した問題で考える力を試そうという意図を感じる問題が多い印象でした。過去問をやっていればある程度対応できると思います。


【口頭試験】
・勉強方法
 青本に載っている全ての口頭試験の過去問に目を通しました(3周程度)。載っている解答を完全に信頼したため()、あまり自分で解答を作るようなことはしませんでした。

口頭試験は、求められる知識のレベルはさほど高くないとは思うのですが、自分が持っている知識を上手くアウトプットできるかが大事だと思います。「この問題が出題されたら、自分だったらどのように組み立てて喋るだろうか」と考えながら、いくつかのポイントに分けて理解するようにしました。

挿管困難時の対応、悪性高熱や局所麻酔中毒の対応、術後鎮痛の方法、術中酸素化悪化時の対応、頭蓋内圧の下げ方など、よく出る問題にはスラスラ答えられるようにしておきましょう。加点方式らしいので、言った者勝ちです。

・試験について
 指定の集合時間に待合室にて集合しますが、その同じ時間帯の中でも3グループに分けられて順番に案内されるので、待つ人はかなり待ちます。その間は電子機器シャットアウト、会話厳禁なので、異様な雰囲気の中でひたすら待ちます。この時間に参考書を見ることは許されますが、全く頭に入ってきません。集中力を切らさないように時間を過ごす必要があるでしょう。
 
順番が回ってくると、同時に2030人程度の受験生が移動します。従業員専用通路・エレベーターに乗せられ、ワンフロア貸切の客室廊下に出ます。この雰囲気がまた異様。部屋の前には順番を待つ受験生、所狭しと歩き回る誘導係員、あちらこちらで鳴る時間を知らせるアラーム。その廊下を歩きながら、あなたはここ、みたいな感じで順番に部屋の前に座らされます。症例を渡され(2症例とも、患者のカンタンなプロフィールや予定術式だけ記載されています)5分間でメモを取れます。そのメモは試験中に見ることができるので、問題を予想し、パニックになっても解答できるように要点を書き込みます。
 
部屋に入ると、試験管が2人いて、脇にモニター。このモニターで画像やデータの提示をしてきます。

 試験問題の詳細については、学会のHPや来年の青本を参照していただくとして、私が出題された1例目は、past smokerの食道癌の症例でした。

麻酔方法やDLTの利点・欠点、酸素飽和度低下時の対応などは、とくに問題なく答えましたが、終盤に右腕のアロディニアや腫脹、体温低下を認めて・・・みたいな展開になっていき、「(出たー、苦手なペイン!)」と内心思いつつ、この症例で何が起こっているのか全く分からない。「手術の影響ではない可能性もあります。。。」だとか、「WHOのラダーに沿って、、、」とかあることないことをうだうだと喋って、「(あんまり試験官の反応良くないなー、全然違う方向に話持っていっちゃったかなー)」と思いつつ、1例目終了。

 2例目は、とくにリスクのない膀胱癌の症例。症例を見た時、こんな症例でどんな問題が作れるんだ??と疑問に思い、何となく大量出血系かなーと思って輸血の優先順位だけメモをしましたが、その思惑は完全に外れました。

問題はいきなり全身麻酔後にEtCO2が上がってきて、その原因を5つ挙げろ、から始まりました。初っ端からその問題で、しかも5つも、と言われて少々パニックになり、2つくらいしか答えられませんでした。しかも、パニックのあまり悪性高熱症を悪性症候群と言い間違えてしまうミスを。。。その後の問題は、悪性高熱の診断のもとに、さほど難しくない問題が続きました。

そういえば今回はこっちの問題に、悪性高熱発症時の外科医への対応と、手術中止後の家族への説明、というロールプレイ2本立てという珍しいパターンでした。家族への説明は、試験官が家族役になり、寸劇が始まります。中止になった経緯を説明したら終わりかな?と思ったら、「家族は今後手術を受けても大丈夫?」とか、「どうやって診断していくんですか?」とか、話の流れでいくつか質問されて終了。丁度時間を使い切った感じでした。

色々なタイプの試験管がいると思いますが、今回の試験管は、あまり助け舟を出してくれる感じではなく、当たってそうなことを言っても表情一つ変えません。相槌もありません。「(これで合っているのかなー)」と不安になりながら進む感じでした。後から冷静になって考えてみたら、言えたはずのことの6割くらいしか言えてない状況でした。あのプレッシャー下で堂々と物が言える(しかし謙虚に!)ハートが必要だと痛感しました。


【実技試験】
・勉強方法
 青本を参考に出る可能性のある分野をつぶしていきました。具体的には、ACLS/PALSはガイドラインを読み込み、神経ブロックは少しマニアックなところまで、一応成書で解剖を理解し、同僚と一緒に実際にエコーを当てあいました。DAMのガイドラインを読み込み、去年から消えた始業点検も一応チェックし、これも同僚と一緒にお互いできていないところを指摘しました。ファイバーのシュミレーターでB1,2,3B6を出す練習をしました。airQから気管チューブを入れ替える練習もしました()TEEは普段の臨床でよく使うので、あまり勉強はしませんでした。

・試験について
 ここは体験談27の方と全く同じ問題で、詳しく書かれているので割愛します。
 
 どのブースも時間が窮屈でかなり問題を詰め込んでいるので、次々に進んでいきます。手技だけでなく、質問があったり研修医に説明するようにしながら手技をするように指示されたりします。

脊髄クモ膜下麻酔と右内頸静脈穿刺は何回かやっても逆流(逆血)がなくて焦りましたが、焦りはじめたところで「できたものとします」と言ってくれて次の手技や質問に行ってくれるのでご安心ください。脊髄クモ膜下麻酔は、「なかなか入らない時はどのような工夫をしますか?」という質問をしてくれました。相手はシミュレーターですし、手技が成功しないということで落ちることはないのかな?と思いました。

【最後に】

 筆記試験は過去問最低5年分を完璧にすれば、正直落ちることはないと思います。口頭試験と実技試験は、運の要素もあると思いますが、やはり青本に沿って、あとは各ガイドラインや最近増えてきている神経ブロック・TEEについて理解を深める必要があるでしょう。当日はどんな人でも緊張してテンパると思います。少しミスをしてもそれだけで落ちることはそうそう無いと思いますので、気持ちを切り替えて次に進むことが大事です。来年以降受ける人も頑張ってください。

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