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2014年10月13日月曜日

体験談㉔(第53回麻酔科専門医試験)




この度、専門医試験を受験し、salaryman-anesthesiologist先生のおかげで、
無事1回で合格することが出来ましたので、体験を記させていただきます。

体験記に先立って、まず、全試験の報告・感想を述べさせていただきます。

筆記試験
①A問題100題
→既出問題が約80題くらいあった印象。新出問題はスガマデクスが多かった気がします。2つ選べが多かったです。
 手応えとしては、78題は確実に既出通りで自信あり。後はほぼ2択までしぼっているので、予想得点は8~9割。
②B問題50題
→ほぼ新出問題。相当難しかったです。過去問だけでは対応できません。
 予想得点は2~4割。東京会場は、試験後、相当ザワついてました。
③C問題50題
→例年通りかやや難。予想得点は3~5割。

口頭試験
80代の男性、胸部ステントグラフト挿入術の麻酔。既往:肺癌(左肺上葉切除)、高血圧。

  • 質問:採血・レントゲン等の一般的な検査以外で、術前に必要な検査、重要と考える問診等を答えて下さい。→胸部CT、心エコー、呼吸機能検査、Hj分類、普段の血圧
  • 質問:造影CTをお見せします。所見を言って下さい。また、それでどう考えますか?→中枢側が、3分枝の左鎖骨下動脈に及んでいるか微妙なところです。INVOS等の神経モニターが必要と考えます。
  • 質問:もうお話がでましたが、神経モニターを2つ教えて下さい→INVOS、MEP
  • 質問:MEPをお見せします。術操作後、MEPが次のように(フラット)なりました。何を考え、どうしますか?ステントグラフトによるアダムキュービッツの動脈閉塞を疑います。術者に伝え、ステントグラフトの位置の変更を要請します。平均血圧を上昇させ、脊髄ドレナージで脳脊髄液の排出を行います。MEPに影響を与えている麻酔を変更します。筋弛緩残存の可能性があるならスガマデクス投与、吸入麻酔薬使用していたのであればプロポフォール等の静脈麻酔薬に変更します。
  • 質問:脊髄ドレナージは実際にどのように管理しますか?具体的に教えて下さい。→いつも術者の言う通りに管理しています。何cmH2Oで引いてたかな・・・?すいません、わかりません。
  • 質問:術後覚醒不良でした。原因は?→低体温、高齢、プロポフォール長期投与?
  • 質問:何とか抜管はできました。僕(試験官)をICUの医師と思って申し送りをしてください。→80代の男性で、胸部ステントグラフト挿入術施行しました。既往に高血圧と肺癌で左肺上葉切除があります。術中にMEPが一度フラットになりましたが、位置調整、平均血圧上昇、脊髄ドレナージで改善しました。術後麻痺もありません。低体温が原因と思われる覚醒不良がありましたが、ガスも問題なく、抜管しました。左上葉切除後でもあるので、呼吸は注意して管理して下さい。下肢麻痺の出現にも気をつけて下さい。


70代の男性。腸管虚血の疑いで緊急手術の申し込みがありました。vital、血液検査の結果を提示します。
 (詳細は忘れましたが、ギリギリショックでは無く、クレアチニンもやや上昇してた程度。ガス上軽度アシドーシス、乳酸値軽度上昇だったと思います。)

  • 質問:必要な検査、及び、麻酔中に必要なモニターを教えて下さい。→胸部レントゲン、血液検査(特に凝固)、心エコー、胸腹CT、抗凝固薬内服の有無。フロートラック&プリセップまたはスワンガンツ、CVP。
  • 質問:どういう状態と考えますか?→エンドトキシンによる敗血症でプレショック。
  • 質問:術中、何に注意して管理しますか?目標数値等を挙げて、研修医の先生に管理法を指導するように教えて下さい。→CVPが8~12㎝H2Oになるまで細胞外液やHES製剤を投与、必要あれば昇圧剤を使用して平均血圧は60mmHg以上、ScvO2を70以上、RCCを投与してHt30前後をキープして下さい。
  • 質問:術後の胸部レントゲンです。所見を言って下さい。→やや両側に浸潤影があり、肺水腫になりかかっているような印象です。
  • 質問:術後予想される病態3つ、それぞれ治療を言ってください。→敗血症、肺水腫、腎不全。エンドトキシン吸着療法、利尿剤、透析療法。


60代女性。小脳腫瘍摘出術施行。手術時間10時間。導入時換気困難、挿管困難であったが、何とか挿管できました。術後仰向けにしたところ、舌肥大、眼瞼浮腫あり。
 僕(試験官)は脳外科の医師で、先生に抜管のお願いをします。ロールプレイして下さい。

  • 試験官:抜管して下さい。
  • 麻酔科:抜管なんですが、今日は抜管出来ないと考えます。というのも、この方、換気・挿管が非常に難しいこと、長時間の腹臥位で、舌も肥大しており、おそらく声帯も浮腫が著しいと思います。万が一再挿管になった場合、対応困難と考えます。
  • 試験官:え?ガスは問題ないんですよね?抜管できないんですか?
  • 麻酔科:はい。意識状態を確認したい先生のお気持ちもわかりますが、安全第一で抜管は明日以降が良いと思います。
  • 試験官:いつ頃抜管出来ますか?どうすれば早く抜管できますか?
  • 麻酔科:明日以降です。ステロイド投与で浮腫の軽減をはかります。
  • 試験官:具体的にどうなったら抜管できます?
  • 麻酔科:そうですね。気管支鏡で声帯を観察して浮腫がないことを確認、カフリークテストで、カフ脱気して換気量の差が100ml以上?あれば抜管します。
  • 試験官:もちろん抜管する時は先生が来てくれるんですよね?
  • 麻酔科:極力僕が行けるようにします。麻酔科が責任を持って抜管します。

お疲れ様でした。

以上、口頭試問のやりとりです。
試問後終了までの3分程、雑談タイムがありました。先生の施設ではICUは管理してますか?緊張したでしょう?もう大丈夫ですよ。次の実技も頑張って下さいね。等。

実技試験
妊婦に脊髄くも膜下麻酔単独で麻酔して下さい。人形にSAB

  • 試験官:実技しながら質問に答えて下さい。あなたの施設では消毒は何を使ってますか?→イソジンです。
  • 試験官:なるほど。アルコールだと何%のものを使いますか?→え?え~?確か0.5%だったかな?
  • 試験官:濃度位、知っててね。はい、ルンバールオッケーでした。生まれてきた子供がぐったりしてます。挿管して下さい。チューブは3.0、4.0、5.0。子供の人形登場。→え?満期産ですよね?(ん?3.0、4.0、5.0の3択なら、サイズは3しかありえないか)
  • 試験官:そう、満期産。挿管しながら聞いてね。こどもの気管は大人と何が違うの?→えーと、大人より高位で、一番狭い部位が声門ではなく声門下部?です。
  • 試験官:そうそう。このブースは以上で終わり。○○先生(私の所属する教室の教授)にろしくね~。
ACLS

  • 試験官:(モニター上、サイナスリズムHR40が表示されている。)試験官を研修医と思って、指示しながら蘇生して下さい。意識はありません。挿管されています。頸動脈も触れません。はいどうぞ。→PEAです。心マ開始します。では、アドレナリンとフラッシュ用の生食を準備して下さい。
  • 試験管:どこをどれくらいのペースで押してますか?→剣状突起の下半分を1分間に100回以上です。
  • 試験官:呼吸のペースはどうしますか?→30対2です。
  • 試験官:はい、2分立ちました。(モニター上、Vf)→Vfです。除細動行います。2相性?では200Jで。ピポピポピポピポ。離れて下さい。除細動します。ドン。
  • 試験官:以上です。雑談タイム。○○先生(私の所属する教室の教授)によろしくね~。


分離肺換気

  • 試験官:右肺腫瘍で手術です。153㎝の女性です。人形にダブルルーメンチューブを挿管して下さい。隣の試験官を研修医と思って説明しながらやって下さい。サイズはいくつですか?→35Frです。
  • 試験官:はいどうぞ。→この青い部分が左の気管支のところになるよう留置します。まず喉頭展開します。盲目的に挿入し、気管支鏡でのぞいてみます。右側から気管支鏡をいれます。(お?いいね。普通にいいところに入った。)今、とてもいい位置に入ってます。(念のためこれがセカンドカリーナでないことを確認するために、右の上葉支の解剖を解説。)
  • 試験官:はい、ではダブルルーメンが上手く入らなかったとして、今度はブロッカーを入れて下さい。→はい、では普通に挿管して、顔を右に向けて、気管を左に寄せてと、あれ?人形堅いな?よいしょ。ではのぞいてみます。あれ?これ右かな?左かな?あれれ?
  • 試験官:これは右に入っているんですか?→ええと、あれ?入ってると思いますが・・・ん?
  • 試験官:研修医に説明して下さい!→(おばさん女医さん恐!)はい!ええと、わかりにくいですが、気管軟骨がある方が腹側ですので、ええと・・・。(もはやパニック)
  • 試験官:では画面の上に気管軟骨があるとしたらこれは今右にはいっているのですか?→ええと・・・はい、そうです。いや、違います。あれ?

時間終了の合図。

神経ブロック

  • 試験官:はい、実際の人にエコーをあてて、TAPブロックの画像を出して下さい。→(ええと上から、皮下組織、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋、腹腔だよな)はい、出ました。
  • 試験官:内腹斜筋はどれですか?→ええと、あれ?(内外?外内?どっちだっけ?まさかのパニック。)ええとこれです。
  • 試験官:本当?じゃあ、薬液はどこに入れる?→ここです。腹横筋の上。
  • 試験官:はい、結構です。では次に斜角筋ブロックの画像出して下さい。→はい、神経がこれです。
  • 試験官:では前斜角筋、中斜角筋ふぁどれですか?→ええと、あれ?(右左パニック)こっちが・・・前斜角筋です・
  • 試験官:本当に?→はい。多分・・・。
  • 試験官:では実際にブロック針を使ってブロックしてみて下さい。(こんにゃくみたいなものにエコー下ブロック)→針を神経近くまで進めて、逆血無いのを確かめて、強い抵抗があったら神経内注入の可能性があるのでやめて、抵抗がつよくなければ薬液注入します。
  • 試験官:はい。次はTOFwatchです。実際に貼って下さい。→できました。
  • 試験官:4連刺激は何mA?→え?ええと・・・、すいません、わかりません。
  • 試験官:調べといてね。では、尺骨以外に電極貼る場所は?→ええと・・、おでこのあたり・・?
  • 試験官:何筋?→ええと・・何だっけ?すいません、わかりません。

時間終了

以上実技でした。


体験記
国家試験以来の勉強ということで、自信は全くなく、やる気もそこまで入らず、不安でした。
諸事情があり、本格的に勉強を始めたのは、8月後半でした。ちょうど甲子園が終わった頃でしょうか。
今思うと、自信を持って受験するには少なくとも7月頃から始めることが必要と思います。
筆記試験は過去問命です。私は過去7年分を1周、直近5年は2周、直近3年は3周やりました。
この1周目が大変で、その効率化に非常に役立ったのが、53回版まとめファイル②③です。
筆記試験までは筆記試験の勉強だけやりました。というのも、忙しい臨床のみならず、研究、教育、家庭とあるなかで、試験勉強の優先順位はそこまで高くできないため、効率よく勉強すること、かつ、筆記だけでも合格しておくことが、来年以降の生活を考えた時に重要と考えたからです。そして結果的にこの方法をとることができたのは、53回版まとめファイル①(青本)の存在でした。これがあれば、非常に効率的に試問対策が可能です。
また、試問前日・当日は人生で一番緊張しましたが、会場でみんなが青本を見ているのをみて、みんなと同じことをしている安心感を得ることが出来ました。

このファイルを作成するために、多くの諸先輩方が、情報を惜しげなく提供して下さり、また、その情報を、丁寧にまとめて下さったsalaryman-anesthesiologist先生が、我々のような全国の麻酔科医に情報を提供して下さることで、麻酔科医全体の勉強意欲、レベルの向上につながっていると感じます。salaryman-anesthesiologist先生には本当に頭が下がる思いです。
先生がいなければ私は勉強意欲もわかず、試験も何度も落ちていたと思います。本当にありがとうございました。

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