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2013年10月9日水曜日

体験記⑨

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第52回麻酔科専門医試験に無事合格しました。主に口頭試問・実技試験の体験記です。筆記は口頭・実技の2週間前に行われ、採点によれば162/200点(120点以上で合格)でした。まぁこれは勉強さえすれば絶対に通るので、特に書くことなし。


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実技もある(しかも高い確率で心マさせられる)ので服装はかなり迷ったが、一番無難なスーツを選択。しかしさすがに靴だけは革ではなく、スウェードの布靴にさせてもらった。結局ほとんどの人がスーツだったようです。



試験は日曜日8時50分に神戸ポートピアホテル2階に集合(つまり一番最後の組)だったのですが、車で出かけたら阪神高速神戸線の工事渋滞につかまり、ちょっと冷や汗・・・なんとか8時20分に抜けられた。控え室で長く待たされるという話だったので、ホテル内の売店で水だけ買ってトイレもすませてたら結局集合10分前くらいでした。あぶね~。


控え室内で本や参考書は見て良いが、私語厳禁(もちろん電子機器は全てOFF)なのでその緊張感というか静寂さが確かにつらい(汗)。僕もほぼ全てを網羅して瞬時に答えられるところまで力をもっていったつもりだが、こんな空間で過ごすうちに逆に全てを忘れてしまったような気分になってきた。全身麻酔ってなんでしたっけ?(・∀・;)」みたいな。気のせいだと言い聞かせて、落ち着くことだけ考える。「水は買って正解、さすがに1時間も緊張しっぱなしで水がないのはつらいしな・・・」と思っていたら、係員が後ろの女性にコップの冷水を持ってきてた。なんだ、タダでくれるのかよw。


時間がきたら(この時点で集合時間から1時間もたっていたが)、2列になって従業員専用のエレベーターに導かれて、すし詰めにされて9Fまで。すし詰めすぎて係員の人が最後に乗ろうとして重量オーバーで乗れなかったのには少しウケたw。降りるとホテルによくある狭く長い廊下の突き当たりまで全ての部屋の前に2つずつ椅子が置かれ、係員がたくさんいて立ったり座ったりあちこちでタイマーが鳴ったりと、かなり異様な光景。まさか普通の客室フロアを全て使ってやっていたとは・・・想像してたのと違って面食らう。(勝手に)もっと広い空間を予想していた。


部屋の外の椅子に座ったら、すぐに係員が症例の紙とボールペンを渡してくれる。5分間で好きなようにメモして良い。A4の紙に3題の症例が書いてある。余白は結構あるので、メモする場所には困らない。1・2問目はメインの症例で、3問目がいわゆる接遇問題だった。5分しかないのでメモする時間配分が難しい。しかも自分は時計を持ってきてないので、とにかく急ぐ。すぐ横にはストップウォッチを持った係員がいるので正直落ち着かないが、逆にアドレナリンは出まくり頭脳はフル回転していた。


1例目:妊娠高血圧症候群妊婦が緊急帝王切開予定。血液型はAB(+)。180/120mmHgの高血圧と下腿浮腫、尿蛋白(+)、子癇前症。


この症例はおそらく簡単だ。聞かれることがほぼ予想できる。血液型まで丁寧に書いてあるので、落ちついて異型輸血の優先順位をメモる。これだけは今のうちに書いておかないとその場ではテンパって出てこない可能性があるから。症例提示に血液型が書かれていて本当に感謝w。あとは多分メモする必要はなかった気がするが、一応2分ほど使って高血圧の対処や子癇の治療、DICと肺血栓塞栓症のあたりで思いついたことを書いておく。


2例目:高齢肥満でAf左房内血栓がある患者が急性腸間膜動脈閉塞症によるイレウスで緊急手術。ワーファリン内服中。SIRSを完全に満たす検査所見が提示されている。乳酸アシドーシスと高K血症もあり。


これもある意味簡単。絶対に意識下挿管の話になると踏んだので、そこをもう一度確認。落ち着いてリスク因子に丸をつけて整理。高K血症の治療法を一応羅列でメモしておく。


3例目:OPCAB後の腕神経叢麻痺に対して患者と家族に説明。


これも内容的には難しいことは全くないので、あくまで説明の仕方のみに集中できる。他科の医師に説明せよというパターン(こういうのは話し方に困る)よりよっぽど良心的。しかし接遇問題は前もって提示がないと思っていただけに、これは助かった。しかも「患者と家族に説明して下さい」とまで書いてある。去年もこんなんだったのかな?


全てをメモる時間は当然ないが、5分あれば重要なところは確実にもう一度整理して確認することは可能。準備に与えられた時間としては妥当なところだと思う。


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部屋に入るとツインのベッドが取り除かれた部屋の窓際に長い机が置いてあり、そこに2人の試験官が窓を背に座っている。丁寧に挨拶して2人の目を見た瞬間に、雰囲気的にいけると確信。


1例目は予想通りの展開でサクサクと進む。結局HELLP症候群の疑いということで、麻酔方法は全麻を選択したが、ここで意識下挿管と超急速導入のどちらにするかでちょっと迷う妊婦の緊急帝切で意識下挿管なんかしたことないし・・・と思いつつ、試験官がどっちを期待しているのかが読みづらかったため。試しにどちらの方法も口にして、試験官の反応を見るという作戦に出たw。結局「超急速でいいでしょうね~」という話になったので、その方法を述べた。薬はチオペンタールとロクロニウムの投与量(何mg/kgか)まで細かく聞いてくる。多分そういう決まりになっているんだろう。予想通り異型輸血についても聞かれたのでこれは即答。


意外だったのは自分の横の壁に設置されたモニターを何回か使用したこと。画像や心電図などの所見を見せられることがあるとは聞いていたが、まさかモニターとは思わなかった。まぁこっちの方が見やすくて良いんだけど。モロにHELLP症候群を示す検査データだけがモニターに出て、「はい、これなんですか」と。HELLPですと答えたら、では「HELLPの元になっている症状を英語で3つお願いします」ときた。これはおそらく過去にないパターンでは?もちろん即答しましたが、気がはやって「Elevated Enzyme」と答えてしまったら、「ん?(何か抜けてませんか)」と優しいフォローがきたので、「Liver Enzymeですね、すみません」とすぐに言い直しました。こういう抜けはありがちだが、もちろんノーダメージ。


最後に帰室後3時間で急性肺血栓塞栓症(PTE)になったというところで、心エコー2枚(両心室の短軸像)と胸部造影CT1枚を見せられる。なぜ心エコーが2枚あったのか、いまだによくわからない。どっちもRV拡大LV狭小化で右室後負荷増大を示す似たような画像だったと思うのですが・・・。胸部造影CTはPTEの確定診断なので、それを述べる。あとはPTEの治療法を聞かれるのでガイドラインにある治療法を全て(NO吸入、PCPSなども)答えた。とにかく正解である答えには「うんうん」という大きなリアクションがあるので、相当しゃべりやすい(本当は相槌はうってはいけない決まりらしいが)。


最後に「帰室後に呼吸苦とピンクの泡沫状痰を認めた。コレ何ですか」と国試みたいな質問が・・・まさかひっかけはないだろうと思い、「肺水腫ですかね」と答えると、「それはどれくらいで良くなりますか?」と予想してなかった質問がきてちょっと焦る。「人工呼吸管理にしてPEEPをかければそんなに長い時間はかからないはずですが・・・2、3日くらいですかね(あまり自信はない)」とちょっと曖昧に答えたら、それでOKだったみたいです。これで1例目はおしまい。


ここまでかなり良い雰囲気で来たので、2例目はもう緊張しない。イレウスで麻酔管理的に困ることは何かと聞かれたが、フルストマック以外に思いつかなかった。「まぁ他でたくさん答えてもらったので良いんですけどね」と笑いながら言われたが、結局答えは教えてくれなかった。なんだったんだろうか・・・今考えてもよくわからん。最後に高K血症にいくのかと思いきや、またモニターで腐りかけた腸管の写真と、検査所見が出てくる。典型的な敗血症性ショックのデータ(血圧60/40 mmHgCVP 5mmHgScvO 60%)。


当然Septic shockと答えた後で、「この初期治療でのEarly Goalは何ですか、4つお願いします」ときた。僕は調べていたので知っていたが、これは確か過去に一度も出たことがないはず。答えられなかった人もそこそこいただろう。それもあって、わざわざ検査所見が提示してあるに違いない。この3つの目標数値と、とどめに尿量(意外にも0.5ml/kg/hで良いという特徴的な数字)を答えて完答。尿量のみ提示データに記載がなく、ここまで知っているかどうかを試してくるあたりが「勉強してないと受からないぞ」というメッセージじゃないかと思った。まぁ「4つ」と最初に言われるので、苦しみながらも答えまでいける人は多いのかな?しかし「0.5」という数字はさすがに出まいw。


3例目の接遇問題。もう言葉を丁寧にわかりやすく、あらゆる可能性を示しつつ患者家族に親身になって説明するのみ。「これは治りますかね~、いつくらいに治るんですかね~」と聞いてこられるので、とにかく神経因性疼痛にまでいく可能性も説明しつつ、誠意ある対応を。これで口頭試問は終了。この説明では「全部こっちが悪いです」と謝りすぎてもダメだし(周術期に起こりうる合併症であり、医療過誤ではないから)、極端な結末(絶対治らないです)を説明するもダメ、まぁバランス良く答えられればOKなんですと言われました。


試験時間は25分なのですが、僕は10分も余りました。「先生の答えがあまりにも早いのでこんなに時間が余ってしましたね(笑)」と言われる。それから推測するに、おそらく期待する答えが出るまでは試験官も粘って何度も促すのだろう。それがなかったということはほぼ全て正解を答えたということだ。良し。あとは雑談しながら時間つぶし。試験官の先生2人とも、どう考えても「君はOK」という感じでした。これは100%受かった。


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実技試験も同じフロアの個室でやっているようだ。というか口頭試問の隣の部屋が実技の部屋だったりするw。実技は4つあって、番号順ではないのだが多分あらかじめ順番は決まっているのだろう。ただし4番だけは最後と決まっており、4番の部屋は1つしかないので20分くらい待たされることもあると言われた。試験会場で1つしか用意できない(正確には2フロア使っているので2つ)ものといえば、麻酔器に違いない。始業点検は完璧に覚えた。あとは残り3つで何が出てくるか・・・。


1つ目の部屋は側臥位の人形(体幹部のみ)が置いてあり、どうやら硬膜外の試験。試験官の先生2人は優しそう(よしよしw)。「どちらの側臥位でいきますか?」と聞かれ、よく見たら人形が向かい合わせで2つ並べてある。後で聞いたが、昔に「僕はどうしても右側臥位じゃないとダメなんです」と強硬に主張した奴がいたらしい。そんなのうちにいたら即お仕置きですがw。実技そのものはハッキリ言って簡単すぎ。「やったふりで良いです」というところがやたら多く(消毒・チュービングなど)、あっという間に終わる。ただし清潔手袋はちゃんとはかされました。どうでもいい情報だが、ノンパウダーしかなかったですw。


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2つ目はACLS。メインの試験官の先生がちょっと面白いノリの人で、これまた問題なく終了。心マは確かにちょっと疲れる・・・。エピソードはPEAで心マさせてからVfに移行し、そこでショックという非常にオーソドックスかつ予想通りの内容。心マしながらでも5H5Tを答えられるように訓練していったが(笑)、これは聞かれず。アドレナリン1mgを静注して、上肢挙上とフラッシュというのは答えさせられたが、心マしながらって結構つらい。


最初の心電図をDCの画面で見せるのに、「DCを持って来て」と言わなければならない。VfになったらすぐにDCしたいのに、「まだ来てないんです。DCが来るまでに何しましょう?」ときた。仕方がないので心マ継続。「(もう2分やったし)交代お願いします・・・ハァハァ」と言いかけたら、「あ、DC来ました」だって。心マしたくないだけじゃんw。ここも間違いなくクリアできたはず。


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この部屋を出たところで残り2つ(あと半分)。最後は始業点検でこれはいけるだろうから、すでに3/4ゲットと一瞬気が緩んだ。こういう所に落とし穴があるわけで・・・(汗)。部屋に入るとまた人形・・・「なんだ、DAMか?DAMならAWSで一発クリアしちゃいますよw」と思ってたらどうも様子が違う。これは・・・DLTでの気管支ファイバーか!ここの試験官がほとんど愛想がないのがちょっと嫌な予感。


「DLTの組み立てでテンパった」という感想を読んだことがあったが、まさか自分も手間取るとは・・・。「落ち着いてやってくださいね」と言われながらやるが、本当に手間取る。なんだかキシロカインスプレーで濡れているのか、ツルツル滑ってこれも焦る原因。1分くらい悪戦苦闘してようやく組み立て、「これで良いですか」と聞かれて「はい」と答えるが、なんと組み立てるのに必死でスタイレットを入れてなかった(つまり完全に組み立ててしまっていた)。いざ挿管するという直前で気づいて、冷や汗をかきながらスタイレットを入れ直し。でもよく考えたらスタイレットは必須ではなかったかも(クーデックは最初から入っているので忘れてた・・・)。


挿管は普通に・・・といいつつ(人形なので)若干苦労してDLT挿管。いつも僕がやってるとおり浅めに挿管してそこからファイバーで左手気管支に行く方法で(設定は右肺全摘・・・これは優しいw)。しかしどうも膜様部が見にくくて焦る。今から思えばファイバーの天地を合っていなかったのか・・・最初に確認しなかった僕が悪いんですが。「本当にそっちでいいんですか」「それは第2分岐ですか、第3分岐ですか」と愛想のない質問が次々と・・・気分的に相当追い込まれました。良いと思われる位置に入れましたが、これが第2分岐だったら落ちるのかな?でもチラッと見えた試験官の採点表にはここまで満点になっているような記載が・・・見間違えではないことを祈るのみ。相当手間取ったので、最後に「片肺換気にして下さい」で鉗子で白をかんで、キャップを解放したところでタイムアップ。本当にギリギリまで時間を使ったな・・・。手応えはあまり良くない。


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3つ終わって、今度は部屋の外ではなく実技4の部屋の向かいの部屋の中で待たされる。向かいの部屋の中から呼吸器アラームのような音が聞こえるので、もう始業点検で間違いなかろう。入ったら優しそうな先生2人。あとは落ち着いてやるのみ。補助ボンベがないのは過去の噂通りだったので驚かない。コンプレッサーのみ横にあって、パイピングは酸素・笑気・空気の3つとも再現されている。この呼吸器は大学病院で研修医の時に一番よく使っていたタイプなので、懐かしさを感じながらの実技。


もう完璧に答えたつもりだったが、「最後に研修医(試験官の先生)から質問があります」という形で質問がくるが、結局点検で抜けているところを質問形式で指摘したいらしい。「呼吸器周りで何か(抜けが)ないですか?」と何度も聞かれるが、どうしてもわからない。「先生はほぼ完璧なんですが、惜しいのでもう一息点をあげたくて聞いてるんです」と言われるが、わからないものはわからない。「始業点検のガイドラインに書いてるんですけどね~」とも言われた。残念ながらここでタイムアップ。終わってからガイドラインを読み直したが、それでもやっぱりわからない・・・が、後から思えば吸気弁と呼気弁の動きのチェックだったのかな?それは確かに言わなかった・・・。


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今回の試験でもし仮に落ちるとしたら実技で、しかも第2分岐に挿管した可能性でしかありえない。それも4つのうちの1つが0点でも落ちない(はず)なので大丈夫だと思うが・・・どうも気管支ファイバーは悔いが残る。口角31cmだったので第2分岐ということはないと思うが、自信はない。口頭試問は「普段の麻酔をちゃんとやっていたらできるはず」という話をちらほら聞くが、それはありえないだろう。ちゃんと勉強して細かく覚えておかないと絶対に困る。まぁギリで通るだけならいけるかもしれんが・・・サクサク答えようと思ったら、勉強必須。基本はとにかくリスクとその診断、治療を全て整理できていることだと思う。


試験勉強するまでは結構あいまいにしてたことが多々あって(特に診断と治療)、それをクリアにしていく作業が口頭試問対策のメイン。例えば喘息発作、アナフィラキシー、子癇発作、DIC、敗血症、PTE・・・それぞれ治療方針を全て答えよときたら、ガイドラインを読んで正確に覚えておかないとどうしようもない。さらに即答しようと思ったらシミュレーションを繰り返しておくことも必要。こういう対策なしで受ける奴がいるとしたら、相当良い度胸をしている。知り合いの同期でも全く勉強せずに口頭試問を受けたという人がいたが、これは落ちてた。まぁそういうレベルの試験だとは思う。運はない、とにかく横着せずに死角をなくせばすむ話で、頻出の(つまり麻酔科的リスク管理上重要な)項目は決まっている。


ということで僕の体験記を終わります。あ~疲れた。


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