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2012年5月3日木曜日

まとめ:産科合併症①妊娠高血圧症候群と子癇発作


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妊娠高血圧症候群(旧妊娠中毒症)
基礎知識
・全妊娠の5〜15%程度で発症する。
妊娠20週〜分娩後12週までの間に、高血圧、蛋白尿がみられるもの
妊娠高血圧腎症、妊娠高血圧、前子癇、子癇を含む一連の疾患を指す
・原因は不明なことが多い。

分類
妊娠高血圧腎症:妊娠20週以降に高血圧を発症し、蛋白尿を伴う。通常分娩後12週までに改善する。
妊娠高血圧:高血圧のみを認める。
過重型妊娠高血圧腎症:もともと高血圧、腎臓病があるもの。


重症度
軽症:収縮期血圧140~160mmHg 拡張期血圧90~110mmHg 
蛋白尿 300mg~2g/day
重症:収縮期血圧 >160mmHg 拡張期血圧 >110mmHg 
蛋白尿 >2g/day
超重症:HELLP症候群をきたしたもの

術前チェックポイント
・児、母体の状態
・血圧のコントロール状態
・血小板、凝固能チェック
・HELLP症候群を疑うような症状はないか?
(腹痛や頭痛、嘔気・嘔吐、視覚障害、血小板減少など)

治療
最も根本的な治療は、児の娩出。娩出後48時間以内に改善することが多い。
それまでは下記のように対症的に管理を行う。

分娩までの管理
高血圧への対処血圧は”正常化”してはならない
収縮期血圧160mmHg以上、拡張期血圧110mmHg以上で治療開始する。
140~160mmHg/90~110mmHgを維持する。
・ヒドララジンを5~10mg静注(血圧を見ながら15〜30分毎に投与可能)
・ラベタロール:初回20mg。効果不十分であれば10分間隔で倍量に。極量は300mg/day。
・ニカルジピン:0.5mgずつ静注。持続静注も可能。日本で多く使用されている。
など
輸液:尿量などみながら、適宜晶質液を輸液
血小板・凝固能の評価
・HELLP症候群、産科DICの発見
硫酸マグネシウム(マグネゾール®)投与
血管拡張作用と中枢神経系抑制作用(抗痙攣作用)をもつ。
・子宮筋弛緩により子宮胎盤血流量を増加させる。
・胎盤を通過するため、新生児の筋緊張低下と無呼吸発作の可能性がある。カルシウムで予防可能。
脱分極性、非脱分極性筋弛緩薬の効果を増強する。
分娩後24〜48時間は投与を継続する。
使用法
初回:4〜6gを20分で静注後、1~2g/hrで持続静注
治療域血中濃度:4~8mEq/l(4.8~9.6mg/dl)
適宜血中濃度測定。
ちなみに正常の血清Mg濃度は1.5~2.0mEq/l。

子癇発作への対応時期により妊娠子癇、分娩子癇、産褥子癇
挿管や各種薬剤準備、スタッフの応援を急いで。
・気道確保!舌外傷予防にバイトブロック。
・誤嚥予防のため左側臥位を取り、適宜吸引。
・転落を防止し、痙攣による外傷の予防
マグネゾール投与(上記。すでに投与されている患者では2g追加投与)。
・痙攣に対しマグネゾール以外ではジアゼパムやフェニトイン。気道確保できてない場合は、呼吸抑制、呼吸停止、誤嚥の可能性に注意(特にマグネシウムとの併用で)。ちなみに子癇発作再発予防効果はマグネシウムより低いらしい。
血圧コントロール(上記)
・痙攣が停止し、安定したら分娩へ
・必要に応じて頭蓋内疾患などによる痙攣の除外診断(CTやMRIなど)




□参考文献・書籍・Web
1)MGH麻酔の手引き p589-594
2)SICU pearls p267-272
3)合併症麻酔のスタンダード p119-125
4)手術に欠かせない臨床麻酔のスキル p48-58
5)麻酔への知的アプローチ p447-
6)麻酔科エラーブック p615-619
7)麻酔科シークレット第2版 p428-432
8)産科危機的出血ガイドライン
など

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