さらりーまん麻酔科医の専門医試験対策ページです。これからもよりよい対策資料を作っていきたいと思っています。 何かご相談などあればいつでもメールください。 ※ブログ引っ越しました。
2012年4月10日火曜日
まとめ:PONV対策について
※PONVは、手術・麻酔に伴う合併症の中で疼痛につぐ第二位で20〜30%を占める。
□PONVの病因
・ドパミン(D2)作動性
・コリン作動性(ムスカリン)
・ヒスタミン作動性(H1)
・セロトニン作動性(5-HT3)
⇒それぞれの機序に合わせた薬剤が制吐薬として効果がある。
□PONVのリスク因子
◯患者因子
・女性(思春期以前では性差がない)
・PONV・動揺病(乗り物酔い motion sickness)の既往
・非喫煙者
・術後オピオイドの使用
⇒以上の患者因子が1つ増える毎に、PONVリスクが20、40、60、80%と上昇する
※小児では嘔吐は成人の2倍
※思春期までは年齢とともにリスクが増大する。
◯麻酔関連因子
・揮発性麻酔薬の使用
・亜酸化窒素の使用
・術中、術後のオピオイドの使用
・ネオスチグミン(2.5mg以上)による筋弛緩リバース
◯手術因子
・耳鼻咽喉科手術(鼓室形成など)
・斜視手術
・開頭術
・腹腔鏡下手術
・開腹手術(輸液による腸管浮腫で起こりやすい)
・扁桃摘出、アデノイド手術
・産婦人科手術
・肩手術
・形成外科手術 など。文献ごとに異なるが、太字は共通。
手術時間が30分長くなれば、PONVのリスクが60%上昇する(もともと20%だと32%にアップ)
⇒リスクを2つ以上持つ場合は、制吐薬の予防的投与を考慮
特に高リスク患者では異なる機序の制吐薬を用いる。
制吐薬の単独の効果はどれも変わらない(らしい)。第一選択薬は安全で安価なものを。(5-HT3拮抗薬などは有効だけど高価。日本ではPONVの適応なし)
□主な制吐薬(青字が現在日本においてPONVに使用可能)
・メトクロプラミド(プリンペラン®:ドパミン受容体拮抗薬)10mgiv嘔気時
・プロクロルペラジン(ノバミン®:D2受容体遮断薬) 5〜10mg静注 手術終了時
・ヒドロキシジン(アタラックスP®:抗ヒスタミン薬)25〜50mg静注、点滴静注。悪心嘔吐時、手術終了時
・ドロペリドール(ドロレプタン®:D2受容体拮抗薬)0.625〜1.25mg静注 手術終了時、嘔気時
・デキサメタゾン 4〜8mg静注 導入前
・オンダンセトロン(ゾフラン®:5-HT3受容体拮抗薬)4mg静注 手術終了時
・グラニセトロン(カイトリル®:5-HT3受容体拮抗薬)40μg/kg静注 手術終了時
※今後副作用など表にまとめます。
□麻酔科医ができるPONV予防、治療
・危険因子の回避
・区域麻酔でできる手術は区域麻酔で(全身麻酔の回避)
・過剰にならない適度な輸液
・薬物の使用
・鍼治療(P6刺激)
・吸入麻酔薬を用いない(プロポフォールによるTIVA)
・術中術後のオピオイドの使用を減らす
・ネオスチグミンによる筋弛緩リバースを避ける(スガマデックスがありますしね)
□参考文献、書籍、Web
1)Anet vol.8 No.2 2004 実践麻酔シリーズ PONV対策と麻酔
2)麻酔科研修チェックノート第3版 p192
3)MGH麻酔の手引き第6版 p14,684,762
4)麻酔科エラーブック p443-447
5)麻酔科シークレット第2版 p234.440.403
6)麻酔科トラブルシューティングAtoZ p450
7)Gan TJ, Meyer T, Apfel C, et al.:Consensus guidelinesfor managing postoperative nausea and vomiting. Anesth Analg 97:62-71, 2003.
8)麻酔科薬剤ノート 各薬剤のページ
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4つの危険因子に間違いがありますよ。女性、ponvかms既往、非喫煙者、術後麻薬使用です。
返信削除Koriさんからのお知らせを頂きました。ありがとうございます。
さぬき先生、ありがとうございます(感動)!
返信削除資料を見直しましたが、確かにオピオイドの使用となってました・・m(__)m
こんな半分ふざけたブログを見ていただいて非常に恐縮です。