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2012年4月21日土曜日

まとめ:気管支喘息患者の麻酔


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※喘息の治療薬や投薬方法は様々ありますが、周術期に頻用されるものを載せています。詳細は成書を参照して下さいm(_ _)m

術前のチェックポイント
発作に関すること
最終発作(特に2週間以内)。気道の過敏性は数週間持続する
発作の程度と治療への反応性(外来で吸入する程度か、入院が必要だったか、気道管理まで必要になったかなど)
・発作誘発因子(喫煙、ハウスダスト、上気道感染時など)
喫煙歴の有無⇒あれば即禁煙!!
最近の上気道感染の有無
・アスピリン喘息の有無(別頁でまとめ予定)
治療内容のチェック
・投薬なし
β2刺激薬の吸入
テオフィリン製剤の内服(術前に余裕があれば血中濃度の測定を
副腎皮質ステロイド吸入、内服の有無(大量投与されていればステロイドカバーの考慮)
術前検査
スパイロメトリ(ピークフロー、一秒率の低下に注目)
血液ガス(特にPaCO2上昇の有無)
・胸部レントゲン


術前に発作があったら・・・
・普段喘鳴がない患者が術前に出現していれば、予定手術で延期可能であれば改善を待つ呼吸器内科も受診する。
・改善しても気管の易刺激性は数週間持続するので、手術時期は呼吸器内科や主治医とよく相談の上、決定する。
・慢性的に喘鳴がある患者では、その中でも調子がいい時に手術を決定する。術前に可能な限り内科的治療を行い、状態の改善に努める。起こりうる合併症や術後集中治療室管理になる可能性を含め、しっかりと術前に説明し、麻酔方法や薬剤の選択も慎重に行う。

術前の投薬
・本人内服薬は当日朝まで内服を継続
・本人持ちの吸入薬は手術室搬入前に吸入してきてもうらう
・最近発作があったり、重症患者ではヒドロコルチゾン2mg/kg程度を手術2時間前に投与しておく。緊急手術時にも。

麻酔法
※局所麻酔(脊髄くも膜下麻酔、硬膜外麻酔含む)か全身麻酔かの選択で悩みますね。
どちらも一長一短ある。慣れた方法と症例ごとの総合的な判断。麻酔法による危険性の差はないという報告もある。
全身麻酔
利点気道確保が確実に行える。発作が起きても安全に呼吸管理ができる。
欠点気管挿管操作により喘息発作や気管支痙攣を誘発する可能性がある。
注意点
挿管までにしっかりと麻酔を深くする。
導入薬はプロポフォールやケタミンのように気道感受性を抑え、気管支拡張作用(ケタミン)のあるものを選択。同時に吸入麻酔薬もしっかりとかける。
・維持はTIVAよりも強力な気管支拡張作用を持つ吸入麻酔薬の方が有利かもしれない。
・侵害刺激(強い痛みや腸間膜・内臓牽引など)で発作が誘発されることがあるので、手術中は浅麻酔を避ける
局所麻酔(+鎮静)
利点:気道の過敏性が亢進している患者では有利。
発作が起こっても、覚醒していれば早期発見に有利
交感神経遮断による気管支攣縮はあまり問題にならないという方向もあり。
欠点:鎮静が強いと、早期発見の利点を活かせない
精神的ストレスでも発作が誘発される可能性がある。
発作がおきれば咳で体動が生じ、手術続行に支障を来す。
その他の注意点
・全身麻酔が必要でもLMAを使用することで気道の刺激を抑えることができる。
・人工呼吸中であれば呼気時間を十分にとる
深麻酔下での抜管もしくはLMAへの入れ替えで麻酔を覚醒させる方法もある。ただし、気道確保困難や肥満、フルストマック患者では行わない。
・覚醒中に発作が強くなれば、抜管中止。治療を行いながら集中治療室で人工呼吸管理。 
コリンエステラーゼ阻害薬(ネオスチグミン)の使用を控える(現在スガマデックスが使用可能なため、使用することはほとんどないと思いますが)

麻酔中に発作が発症した場合の対応
症状・徴候
・気道内圧の急な上昇
・バッグが固くなり、呼気の戻りが悪い
・カプノグラムが閉塞性パターンに変化
・聴診上喘鳴。自発呼吸なら呼気の延長も。 
まずすること
吸入酸素濃度を上げる(100%)
気管チューブの位置のチェック分泌物の吸引を行う。そもそもこれが原因で喘息発作でないことが多い。アナフィラキシー様反応との鑑別も(発赤など)
吸入麻酔薬濃度を上げる(強力な気管支拡張作用)
投薬
吸入麻酔薬(全身麻酔中は第一選択)
β2刺激薬の吸入(全身麻酔中であれば回路内に専用チャンバーを使用して2パフ)。20毎に使用。サルブタノール(ベネトリン®)
テオフィリン製剤(アミノフィリン®)投与(賛否両論あり)
1)3〜4mg/kgを緩徐に静注。0.8~1.0mg/kg/hrで所見を見ながら投与。術前よりアミノフィリンを投与されている患者では半量程度に減量する。
2)6mg/kg点滴静注。最初の半量を15分、残りを45分で
※テオフィリン製剤の副作用:頻脈・不整脈、悪心・嘔吐、けいれんなど。
心疾患患者では注意。
□副腎皮質ステロイド:中等度以上の発作、術前よりステロイドを投与されている患者で使用する(ステロイドの種類や力価などはこちらを参照)
 1)ヒドロコルチゾン 200〜500mg(小児では5〜7mg/kg) 
 2)メチルプレドニゾロン 40〜125mg(小児では1~1.5mg/kg) 
 3)デキサメタゾン・ベタメタゾン 4~8mg
※必要に応じて4〜6時間毎に。アスピリン喘息患者ではリン酸エステル製剤を使用すること(ハイドロコートン、デカドロン、リンデロン)。
アドレナリン(0.1%)皮下注
0.1~0.3mlを皮下注。重症発作や、上記治療に反応しない場合。20〜30分ごとに反復投与可能。頻脈、不整脈に注意する。小児では用いない。



□参考文献・書籍・Web
1)MGH麻酔の手引き p12 343 674 677
2)患者術前評価・管理の手引き p103-111
3)合併症麻酔のスタンダード p9-16
4)麻酔科シークレット第2版 p271-277
5)麻酔科トラブルシューティング p260
6)麻酔科トラブルシューティングAtoZ p368
7)麻酔科臨床の書 p175
8)麻酔科研修チェックノート第3版 p178-179


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