さらりーまん麻酔科医の専門医試験対策ページです。これからもよりよい対策資料を作っていきたいと思っています。 何かご相談などあればいつでもメールください。 ※ブログ引っ越しました。
2012年4月15日日曜日
まとめ:小児の感冒症状
まずはじめに、Chales Cote医師の論説(麻酔科エラーブックp465、Avoiding Common Anesthesia Errors p516より引用)
・・・・・・・・・・・・・(引用開始)・・・・・・・・・・・・・・・
"We are left to our best clinical judgement about an individual patient undergoing a specific procedure for a specific duration of time by a specific surgeon that requires intubation that may or may not involve admission to the hospital who also has or has hada a recent URI."
「一人の患者が受ける手術は術式もさまざま、予定時間もさまざま。それには気管挿管が必要としても、入院が必要な場合もそうでない場合もある。そのうえURIに関しても、罹患して間もなかったり、治癒した後だったりする。そのようなさまざまな変数を計算に入れて最善な臨床的判断を下すことが、われわれに求められているのである」
・・・・・・・・・・・・・・(引用終了)・・・・・・・・・・・・・・・
至言ですね(^^ゞ
※上気道感染(以下URI)に罹患した小児の麻酔リスクに関するエビデンスは多くないため、臨床経験と臨床状況、社会的要因を考慮してメリット、デメリット、手術の緊急性などを含めて判断する必要がある。何から何まで延期すればいいというものではない。
□基礎知識
・URIの一般的症状は、化膿性鼻漏、発熱、咽頭痛、咳嗽、喘鳴、ラ音など。湿性咳嗽や喘鳴が強いと下気道感染の可能性あり。
・小児ではわずかな分泌物でも気道の閉塞をきたす可能性がある
・上気道感染により鼻咽頭〜上気道の分泌物が増加する。気道粘膜の過敏性も亢進し、気管支攣縮、喉頭けいれん、低酸素血症(酸素飽和度低下)、無気肺、肺炎などの周術期呼吸器合併症のリスクが上昇する。
・よく言う「風邪っぽい」とか「鼻水が出る」というのは、URIではなくアレルギー性鼻炎のことがある。⇒延期の必要性は低い。
・アレルギー性鼻炎では発熱や湿性咳嗽は見られず、鼻汁は通常は透明でさらさら。
・気道粘膜の過敏性亢進はURI治癒後も4〜6週間持続する。
・小児は多ければ年間6〜10回も罹患する・・。
・URIによる呼吸器合併症は年齢が低いほど頻度が高い。
・風邪症状が別の重篤な疾患(肺炎や心筋炎など)の初期症状のことがある。麻酔や手術のストレスで悪化する可能性がある。
・一般的には上気道感染治癒後最低2週間、可能なら4〜6週間の延期が望ましいとされているが・・・・。特に気管挿管による全身麻酔は。
※考えなしの延期は、デメリットがメリットを上回る可能性がある
□延期することのデメリット
・延期したからといって、今の症状が軽快する保証もなく、次のURIに罹患してしまう可能性もあり、いつまでたっても手術が施行できなくなる。
・ 低酸素や喉頭けいれん・気管支けいれんなどの合併症は、経験十分な麻酔科医が担当していれば、適切な処置で十分対応可能である。
◯社会的要因
・学童であれば、休まなくてはならない。
・親の仕事の都合。
・遠方からの来院の場合
・他の兄弟がいる場合の、周術期の世話など
□延期決定!(これは迷わない!下気道感染があれば6週間は延期)
・URIの症状が強かったり、下気道感染を合併している場合
①38℃以上の発熱
②強い喘鳴
③強い頻回な湿性咳嗽、ラ音
④ぐったりしている
⑤頭痛や嘔吐、下痢などの他の全身症状
⑥レントゲンで異常陰影(肺炎など)
⑦1歳以下のURI
□問診で気をつけること
◯しっかりとした問診、説明をする。
・発症時期、症状の経過、他の症状の有無
・単なるアレルギー性鼻炎かどうか⇒普段鼻炎がない子が鼻汁が出ていたり、他の兄弟や幼稚園・保育園などで風邪が流行っている場合はURIの可能性が高い。
◯緊急性が高く、手術施行が決まったら、周術期呼吸器合併症についてはきちんと説明を行う。
□手術施行を決めた場合の麻酔のポイント
・避けられるなら気管挿管を行わない
⇒ラリンジアルマスクやマスクホールドで行う。
・術前、術後にアトロピン(0.1mg/kg)投与。うつ熱注意。
・吸入麻酔は気道刺激性が少ないセボフルランを使用
・急速導入ならチオペンタールよりもプロポフォールを使用。
・気管挿管が必要であれば、喉頭炎予防のためデキサメタゾン(0.3~0.5μg/kg、最大10mg)の投与を考慮する。
□まとまりませんが・・・・
・上記延期決定事項に該当すれば4〜6週間延期
・軽いURIやアレルギー性鼻炎で気管挿管が必要なければ、十分な説明を行い、手術を施行する。
・軽いURIであっても、気管挿管が必要であれば待機手術は2週間は延期。緊急性が高ければ施行。
・麻酔にあたっては上記工夫を行う。
□参考文献・書籍・Web
1)MGH麻酔の手引き p553,566
2)患者術前評価・管理の手引き p321
3)合併症麻酔のスタンダード p1-7
4)麻酔への知的アプローチ p486
5)麻酔科エラーブック p463-465
6)麻酔科臨床の書 p164-166
7)麻酔科トラブルシューティングAtoZ2−4
8)本ブログの投稿 2011/10/13
9)Avoiding Common Anesthesia Errors p516
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