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2012年4月14日土曜日

まとめ:悪性高熱症総まとめ


基礎知識
・揮発性麻酔薬や脱分極性筋弛緩薬により誘発される致命的な代謝亢進症候群
小児では3000~15000例に1例(報告によりばらつきが大きい)
成人では40000~150000例に1例
・小児では成人の3倍以上
・日本においては60000例に1例程度。
筋小胞体のリアノジン受容体(RYR1)の遺伝子異常により、骨格筋内のカルシウムの過剰放出、再取り込み障害によって起きる。
・1/3の患者は初回の麻酔で発症、残りは2回目以降で発症
前回大丈夫だといって今回も大丈夫だとは限らない
・ダントロレンが使用されるようになってから死亡率は10%未満になった。
死因は重篤なアシドーシスや高カリウム血症による心停止(病状進行中)、数時間以内では肺水腫DIC,数日以内では低酸素による脳神経障害や脳浮腫、ミオグロビン尿による腎不全など。



術前診断・検査関連
十分に準備(下記)をし、麻酔をTIVAで行えば安全に麻酔は施行できるので、必ずしも確定診断が得られていなくてもほぼ問題ない
・筋生検でカルシウム誘発性カルシウム放出(CICR)試験(日本はほとんどこれ)。筋生検は最近では手術中に行われることも多い。
・ハロタン−カフェイン試験
・遺伝子診断
・リンパ球診断
・メタボリックテスト などが行われている。
⇒CICR試験で陰性なら純粋なMHはほぼ否定的だが、同じRYR1が原因の類縁疾患は否定出来ないので注意が必要!また、臨床的に劇症型悪性高熱症が認められても25%はCICR試験は陰性に出るという報告もある。

重要な問診
過去に麻酔中に異常があったり、死亡した家族がいるかどうか(家族歴)
過去に麻酔経験があった場合、問題がなかったか(既往歴)
以前問題がなくても、MHは否定はできない
悪性高熱症と関連があると言われている疾患がないか(筋疾患との合併が多い)。
 ①セントラルコア病
 ②進行性筋ジストロフィー
 ③筋緊張性ジストロフィー
 ④周期性四肢麻痺 など
※これらの疾患が合併していれば、MHの素因があるものとして対応する。

使用可能な薬剤と使用禁忌の薬剤
使用可能薬剤
亜酸化窒素
・各種オピオイド
・全ての局所麻酔薬
・各種静脈麻酔薬(プロポフォール、バルビツレート、ベンゾジアゼピン系、ドロペリドールなど)
非脱分極性筋弛緩薬
・抗コリン薬
・抗コリンエステラーゼ薬 など
 ◯使用禁忌薬剤
脱分極性筋弛緩薬(スキサメトニウム)
揮発性麻酔薬

術前の準備
スタッフ間での情報の共有
冷却食塩水、暖めた蒸留水などの準備
・各種循環作動薬、抗不整脈薬、その他薬剤などの準備
 ◯各種循環作動薬
 ◯利尿薬(フロセミド、マンニトール)
 ◯レギュラーインスリン+50%ブドウ糖溶液(GI療法用)
 ◯カルシウム製剤(グルコン酸カルシウム、塩化カルシウム)
 ◯注射用蒸留水(温める)
 ◯冷却用生理食塩水大量に
 ◯リドカイン、プロカインアミド
ダントロレン(20mg/V)の準備
新しい麻酔回路
新品のソーダライム(高流量酸素で洗い流す)
気化器を取り外し、10㍑/分で5分程度洗い流した麻酔器
・太い静脈ライン、動脈ライン、中心静脈ライン(場合によっては肺動脈カテーテル)

MHの徴候・症状AかBを満たし、その他の症状あり⇒劇症型
高体温(体温基準満たさず、下記の症状があれば亜型MH)
A:麻酔中体温が40℃以上(43℃を超えることもまれではない)
B:麻酔中15分間に0.5℃以上の体温上昇で最高体温が38℃以上
呼気終末二酸化炭素分圧の異常上昇(正常の最高2〜3倍まで)。体温上昇や筋強直に先行することが多い(乳幼児では体温上昇が初発症状のこともある)
筋収縮(特に咬筋)の持続(神経筋遮断薬投与中でも)
代謝性、呼吸性アシドーシス
低酸素血症、高二酸化炭素血症
横紋筋融解ミオグロビン尿(ポートワイン尿)、高カリウム血症、高CPK血症
その他の逸脱酵素の上昇(AST,ALT,LDHなど)
心室性不整脈説明のつかない頻脈
臓器障害(低酸素、アシドーシス、中枢神経障害、肺水腫、肝不全、腎不全
初期の症状・徴候は通常手術内で生じるが、PACUや病棟帰室後に生じることもあるので、術後も注意

治療・対処
術者に知らせ手術の中止または早めの終了を要請し、応援の麻酔科医を呼ぶ
吸入麻酔薬の即中止、高流量純酸素に。回路や麻酔器の交換は余裕があれば行う。
ダントロレンの投与: 1V(20mg)を60mlの蒸留水で溶く(42℃上限の温水で)。初回量は1~2mg/kg(つまり初回に3V~6Vは必要)を10~15分かけて静注。その後は心拍数が低下、筋緊張が低下、体温低下まで5分ごとに1mg/kg/minで持続投与。日本での総投与量は7mg/kgだが、こだわる必要なし。
強力な冷却中枢温が38℃以下になれば中止。シバリングが生じるため)
・大量の氷のう、冷却用マット
・冷たい輸液、胃管からの冷却食塩水の投与
・アルコールの全身塗布
・体腔が開いていれば、冷却食塩水による体腔冷却
◯不整脈にはリドカイン0.8〜1.0mg/kgCa拮抗薬はダントロレンとの併用で高カリウム血症、循環虚脱による心停止の報告あり。プロカインアミド50~100mg/minで総量15mg/kgまでか、おさまるまで(低血圧を起こすこと有り)
アシドーシスに対しては換気と炭酸水素ナトリウム
十分な輸液と利尿薬(フロセミドやマンニトール20〜40g:20%溶液で100〜200ml程度)を投与し、2ml/kg/hrの尿量を得る。
高カリウム血症には、グルコースインスリン療法、カルシウム製剤投与
ショックに陥ればショック対策を同時進行で

術後管理(ICU管理)
悪性高熱症の再発または術後発症(再燃は50%に生じる)
⇒ダントロレンの半減期はおよそ10時間。再燃(異常な発汗や頻脈、頻呼吸、体温再上昇)に注意
体温モニター
・DIC、急性尿細管壊死が急性発症後に生じることがある。ダントロレン1mg/kg静注か内服を6時間毎に、48〜72時間は継続する。

悪性高熱症に関する家族説明
・一部の麻酔薬(吸入麻酔薬と脱分極性筋弛緩薬)に対する異常な体の反応を起こしてしまう病気であること。
・頻度は高くないが(数万人に一人)、一旦生じれば致死的になりうるということ。
・現在は特効薬があるが、使用しても10%未満の確率で致死的であること。
・安全に使用できる薬剤、麻酔法があり、それを用いるということ。
・適切な準備を行い、万が一発症すれば適切な処置を行うこと。
(全身麻酔も避けられるようなら他の麻酔法を勧める)










□参考文献・書籍・Web
1)悪性高熱症友の会HP http://homepage3.nifty.com/JMHA/
2)麻酔科専門医認定筆記試験問題解説集 各年度
3)MGH麻酔の手引き p180 182  210  341 348-350
4)麻酔科診療プラクティス13  モニタリングのすべて p175
5)患者術前評価・管理の手引き p333−336,445
6)合併症麻酔のスタンダード p163-170,196
7)麻酔への知的アプローチ 14,76,129,312-323
8)麻酔科エラーブック p313-317
9)麻酔科シークレット第2版 327-330
10)麻酔科トラブルシューティングAtoZ 250-252








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