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麻酔管理の目標は
①麻酔による合併症を避ける(術中管理を適切に行う)②麻酔後の腎機能低下を防ぐ
③無事に手術室を出す(^^)
こと
□基礎知識
・糸球体濾過率が50%以下、血清Cre>2.0mg/dl以上で慢性腎不全
・腎不全症状はネフロンが40%まで減少しないと顕在化しない。
・糸球体濾過率は125ml/min。
・腎動脈圧が80~180mmHgでは腎血流量の自動調節能がある。血圧低下で尿量は減少するが、血圧を戻さないと尿量も回復しない。
・入院中に腎不全を発症すると予後が悪い。
・術前に急速に腎機能が悪化してくるようなら手術は中止し、原因を検索する!
・透析患者では、周術期に心不全や心筋虚血などの心血管系合併症を起こしやすい。
・エリスロポエチン分泌低下などにより、正球性正色素性貧血を呈する。
□腎臓の機能(念のため・・)
・体液量、電解質調節(Na,K,Cl,Ca,Pなど)
・老廃物、薬物の排泄
・酸塩基平衡調節
・レニン分泌
・エリスロポエチン分泌
・vitaminD変換
□術後の腎不全の危険因子
・左室機能障害(うっ血性心不全)
・循環血液量減少
・造影剤使用
・アミノグリコシド系抗生物質の使用
・術前からの腎機能低下(BUN、Cre値の上昇、Ccr低下)
・高齢
・糖尿病の合併
・心、血管系の大手術
□クレアチニンクリアランス(単位はml/min)
※24時間の蓄尿が必要だが、2時間でもかなり正確な結果は得られる。
正常:100〜
予備能の低下:60〜100
軽度の腎機能不全:40〜60
腎不全:〜25
□術中何がおこるとイヤ?
・高カリウム血症、代謝性アシドーシスによる心停止
・心不全、肺水腫の発症
・シャントが詰まる・・・(術前にシャント音とthrillをチェックし、術中も定期的にチェックし記載する)
□術前のチェック項目
※透析まではしてない患者
・背景疾患(DMや腎炎、薬剤性など)
・24時間以内の血液検査(貧血の有無、電解質、BUN/Cre、凝固系など)
※低Na,低Cl,高K,高P,Mg血症の有無など
・血液ガス(アニオンギャップ増大型代謝性アシドーシスの有無のチェック)
・クレアチニンクリアランス
・心エコー(心嚢水の有無、弁膜症、心機能、大動脈の石灰化など)
・胸部レントゲン(CTR拡大、肺うっ血所見の有無)
・心電図
・問診(運動をどれくらいできるのか?最近体がキツくないかなど)
※透析患者は、上記に加えて・・・
・透析スケジュールの確認(通常手術前日に行われる)
・ドライウェイトと透析直前の体重確認
・除水量(術中輸液量の参考に)
・電解質(特にK)の推移
・透析中の意識消失発作や胸痛、血圧低下などのエピソード
□腎不全と麻酔に使用する薬物(簡単に・・・)
◯吸入麻酔薬(腎血流量、糸球体濾過率を減少させる)
・デスフルランが一番安全
・イソフルランも生体内代謝がほとんどなく安全
・セボフルランは臨床使用濃度で有機フッ素50μmol/lに達するとか、compoundA産生リスクなどあるが、基本的には安全に使用できる。
◯麻薬(モルヒネ以外は基本的に安全)
・モルヒネは代謝物のモルヒネ-6-グルクロニド(M-6-G)が腎排泄であり、強力な鎮痛、呼吸抑制作用を持ち、腎不全があると作用が遷延するので要注意(術後も)
・フェンタニルは肝臟で代謝、7%が未変化で腎排泄。
・レミフェンタニルは血中の非特異的コリンエステラーゼで代謝され、腎不全患者でも全く安全。
◯静脈麻酔薬
・低蛋白血症がある場合、作用が増強する可能性がある。基本的には少量から投与。
◯筋弛緩薬と拮抗
・スキサメトニウムは高カリウム血症を来すので基本的には使用しない
・ベクロニウム、ロクロニウムは効果の遷延が見られるため、追加投与などは筋弛緩モニターを使用しながら使用する。
・拮抗はスガマデックスで行う。腎臓から排泄されるため透析患者では体内に留まる。hi-fluxの血液除去フィルター使用の透析か、CHDFに通常使用されているろ過膜で除去可能。
・ネオスチグミンは作用延長する。
◯ナトリウム利尿ペプチド
・利尿を促し、肺水腫や浮腫を軽減する。腎血流量や糸球体濾過率を改善し、腎保護作用を持つ。血圧低下に注意し、循環血液量の維持に努める。
□術中モニターと輸液
※腎機能をリアルタイムでモニターする方法はない。特に透析患者では尿量が循環血液量の推定に使用できない。つまり、腎機能低下を起こす要因(循環血液量減少や、心不全)をモニターするのが我々の役割。
・必要であればCVP測定
・心機能障害、心不全、大血管手術、人工心肺使用手術では肺動脈カテーテルの使用を考慮する。
・動脈ラインを留置するのであれば、心拍出量を測定できるタイプのものを(フロートラック®)使用する。
・輸液は余分な水分とKを投与しないこと!出血、不感蒸泄、サードスペースへの水分移行を考慮して細胞外液あるいは輸血を必要最小限行う。
・過度の貧血により、心筋酸素需給バランスが崩れる危険があるため、術中はHt30%を目標に輸血を行う(カリウムの上昇に注意する!)
□参考文献・書籍・Web
1)合併症麻酔のスタンダード p107-118
2)麻酔科臨床の書 p145-151
3)麻酔科研修チェックノート第3版 p181-182
4)麻酔科トラブルシューティング p148-151
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