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※ステロイドカバー自体の必要性の有無、施設ごとの投与量・投与方法いろいろあると思います・・。書籍や文献によっても意見はバラバラです(^^ゞ
□ステロイドカバーに関する基礎知識
・手術侵襲や麻酔、感染症などによるストレスによりコルチゾルの分泌量は増加するが、ステロイドの長期投与によりHPA系の抑制が生じることで副腎機能の低下、副腎の萎縮が起こり、ストレスに見合うだけのコルチゾル分泌が得られなくなる。その際に生じるショックを主体とする病態(ステロイド離脱症候群)。
・症状としては全身倦怠感や意識障害、痙攣、難治性の低血圧や低血糖など。
・HPA抑制の程度はステロイドの投与量と期間に依存するが、個体差も大きい。
・成人では小手術では50mg/day程度、第手術では75〜150mg/day程度のコルチゾルを分泌する。分泌量は手術侵襲に依存する。
・コルチゾルの通常の分泌量は25〜30mg/day程度
□ステロイドカバーを考慮する患者、いらない患者
※これもいろいろな記載があるのですが・・・おおむねで(^^ゞ
・ステロイド投与中止後1年以上たっていれば必要なし。つまりそれ以内なら考慮はする。
・過去1年間に2〜3週間以上、あるいは最近3週間以上にわたり生理的分泌量以上(25〜30mg/day以上)のヒドロコルチゾンまたは等価のステロイドが投与されている患者、(医原性)クッシング症候群(ムーンフェイスや中心性肥満など)を呈している患者はHPA系が抑制されている可能性があるためステロイドカバーを考慮する。
・5mg/day以下のプレドニゾロン(20mg/day以下のヒドロコルチゾン)あるいは、投与量にかかわらず3週以内あるいは隔日投与であれば周術期も常用量でよいとされている。
・それ以下の患者では個人差が大きい(ステロイド代謝率の差)
・内服以外では、長期間にわたる0.8mg/day以上の吸入ステロイド(喘息患者など)使用患者や、2g/day以上の局所ステロイド剤使用患者。
・悩む症例では、念のためステロイドカバーを行うか、余裕があればACTH刺激に対する反応性試験(rapid ACTH試験など)を行う。
□ステロイドカバー今昔
・以前は1日300mgのヒドロコルチゾンが投与されていた。・従来のステロイドカバーは明確なエビデンスに基づいたものではなかった。
・大手術でも200mg以上のコルチゾル分泌はまれであることから最近は減量傾向。
・周術期の本物の急性副腎不全の報告はとても少ない
・術後、副腎不全に類似した血圧低下も、ほとんどは循環血液量不足。
・通常投与量のみでも周術期に副腎機能不全を起こさなかったとの報告もある。
⇒従来のステロイドカバーではステロイドの過剰投与のおそれがある。また、ステロイドカバーの必要性に疑問が持たれるようになってきている。
□ステロイド過剰投与による副作用
・筋肉に対する異化作用・インスリン抑制による耐糖能低下
・易感染性
・ステロイド潰瘍
・高血圧増悪
・体内の水分貯留
・精神障害
□ステロイドカバーのプロトコル例
どの手術でも当日朝の常用量は内服する□小手術(鼠径ヘルニア、泌尿器科・産婦人科の小処置、口腔外科手術、形成外科手術、局所麻酔による手術)
当日朝の常用量のみで補充の必要なし
□中等度手術(開腹胆嚢摘出術、胃切除術、人工関節全置換術、四肢の末梢血管再建術などなど)
術前に50〜75mg。術中は25~50mgを6〜8時間ごとに、術後第1病日は20mgを6〜8時間毎に投与または常用量に。
□大手術(開胸手術、心臓手術、大きな開腹手術)
術前に100〜150mg。以後25~50mgを6〜8時間毎に。その後、術前投与量に戻るまで毎日50%ずつ減量する。
□よく使用されるステロイド。[ ]内は力価
・ヒドロコルチゾン(コートリル®)[1] ・コハク酸ヒドロコルチゾン(サクシゾン®など)[1]
・プレドニゾロン(プレドニン®など)[4]
・メチルプレドニゾロン(メドロール®)[5]
・コハク酸メチルプレドニゾロン(ソル・メドロール®など)[5]
・デキサメタゾン(デカドロン®)[30]
・ベタメタゾン(リンデロン®)[30]
□参考文献・書籍・Web-seite
1)MGH麻酔の手引き(MSI)p44 p98
2)SICU pearls p121
3)患者術前評価・管理の手引き p349-350
4)合併症麻酔のスタンダード p250-258
5)麻酔への知的アプローチ p501-502
6)麻酔科シークレット第2版 p357
7)麻酔科研修チェックノート p63
8)麻酔科臨床の書 p88-89 など
副腎機能不全でコートリル15mg(10−0−5)服用中の患者の乳癌手術を担当になりました。ステロイドカバーをどうすればいいのか,ネットで検索してこちらにたどり着きました。小手術と考えて定期の内服のみでいいとわかりました。大変、勉強になりました。ありがとうございます。
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