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2012年3月25日日曜日

静脈血栓塞栓症(VTE)のリスク分類と予防について


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要点
□除外診断にはD-dimer
□検査の第一選択は静脈エコー(低侵襲)
□ VTEの既往があれば、婦人科の低侵襲手術以外はすべて最高リスク!!
□ひどい外傷ならそれだけで高リスク以上
□試験でVTEが問われるようなものは高リスク以上。これをしっかり覚える(^^ゞ
□高リスクグループ以上では必ず抗凝固療法を。



症状・徴候
□原因不明の下腿浮腫、発赤
□表在静脈瘤
□症状なし

危険因子と頻度
□危険因子の強度弱
肥満 エストロゲン治療 下肢静脈瘤
□危険因子の強度中
高齢 長期臥床 うっ血性心不全 呼吸不全 悪性疾患 CVC留置 化学療法 重症感染症
□危険因子の強度強
VTEの既往有 血栓性素因 下肢麻痺 ギプスによる下肢固定
※素因はATⅢ欠損症 プロテインS・C欠損症 抗リン脂質抗体症候群、抗カルジオリピン抗体症候群 など

診断
□除外診断には血清D-dimer
下肢静脈エコー
□造影CT
□下肢静脈造影


各科手術のリスク階層化
一般外科・泌尿器科
低リスク
・60歳以下の非大手術
・40歳以下の大手術
中リスク
・非大手術(60歳以上、あるいは危険因子あり)
・大手術(40歳以上、あるいは危険因子あり)
高リスク
・40歳以上の癌の大手術
最高リスク
・VTEの既往ないし血栓性素因のある第手術

婦人科
低リスク
・30分以内の小手術
中リスク
・良性疾患手術
・ホルモン療法中の患者
高リスク
・骨盤内悪性腫瘍根治術
・VTEの既往ないし血栓性素因のある良性疾患手術
最高リスク
・VTEの既往ないし血栓性素因のある大手術

脳神経外科
低リスク
・開頭術以外
中リスク
・開頭術
高リスク
・悪性腫瘍の開頭術
最高リスク
・VTEの既往ないし血栓性素因のある大手術

整形外科
低リスク
・上肢の手術
中リスク
・脊椎手術
・高リスク手術を除く骨盤・下肢手術
高リスク
・股関節全置換術(THA)
・膝関節全置換術(TKA)
・股関節骨折
・脊髄損傷
最高リスク
・VTEの既往ないし血栓性素因のある高リスク手術
・肥満の高リスク手術患者

産科
低リスク
・正常分娩
中リスク
・高リスク以外の帝王切開
高リスク
・VTEの既往ないし血栓性素因のある経膣分娩
最高リスク
・VTEの既往ないし血栓性素因のある帝王切開

●外傷
低リスク、中リスク
・なし
高リスク
・重度外傷
・運動麻痺を伴う完全または不完全脊髄損傷
最高リスク
・VTE既往ないし血栓性素因のある高リスク手術

VTE予防
低リスクグループ:DVT発症率2%(欧米)
・早期離床と積極的な運動を促す
中リスクグループ:DVT発症率20%超
・弾性ストッキング(ES) or 間欠的空気圧迫法(安定血栓なら)
高リスクグループ:DVT発症率30%超
・間欠的空気圧迫法(IPC)or 低容量未分画ヘパリン
最高リスクグループ:DVT発症率40%超
・低容量未分画ヘパリン+ ES or IPC
・用量調節未分画ヘパリンのみ
・用量調節ワルファリン投与
・IVCフィルター留置考慮
低容量未分画ヘパリンは8時間もしくは12時間ごとに未分画ヘパリン5000単位を皮下注射する方法
用量調節未分画ヘパリンはAPTTの正常値上限を目標として未分画ヘパリンの投与量を調節して,抗凝固作用の効果をより確実にする方法であ る。最初に約3,500単位の未分画ヘパリンを皮下注射し,投与4時間後のAPTTが目標値となるように,8時間ごとに未分画ヘパリンを前回投与 量±500単位で皮下注射する。煩雑な方法ではあるが,最高リスクでは単独使用でも効果がある。
容量調節ワルファリンはワルファリンを内服し,PT-INR(プロトロンビン時間の国際標準化比)が1.5~2.5となるように調節する方法である。ワルファリン内服開始から効果の発現までに3~5日間を要するため,術前から投与を開始したり,投与開始初期には他の予防法を併用したりする。

●IVCフィルター留置の適応
・術前から抗凝固療法を行なっているのにもかかわらず繰り返すVTE
・最高リスク群であるにもかかわらず、抗凝固療法が禁忌であるような手術症例
・急性期に下肢の近位部から骨盤内にかけてDVTを認める場合。



※合併症麻酔のスタンダード pp95-98
※麻酔科トラブルシューティングAtoZ pp112-113
※静脈血栓塞栓症の既往を有する患者の周術期管理の検討 黒岩政之ほか 
麻酔52:744-749,2003
※静脈血栓塞栓症 一歩進んだ周術期予防と危機管理のために 黒岩政之
臨床麻酔32:441-457.2008
※肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症予防ガイドライン 
肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン作成委員会

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