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65歳男性。身長160cm、体重75kg。夕食後、自動車にはねられ救急車で病院に搬送された。脾臓破裂に対して、緊急手術が予定された。呼吸困難とめまいを興奮状態である。血圧78/46mmHg、心拍数132回/min。左10,11肋骨骨折が確認された。ヘマトクリット値は25%であった。
質問
1)術前評価と管理①この患者の術前状態における問題点を重要と思われる順に列挙してください。
2)麻酔法および術中管理
①麻酔導入・気管挿管の方法を選択し、その手順を述べてください。
②気管挿管後、肺の換気がしだいに困難になってきた。考えられる原因について述べてください。
③どのような方法で麻酔を維持するか、その理由も述べてください。
3)術後管理
①回復室で心拍数110回/minでした。原因として何を考えますか。
②術後の乏尿に対する治療手段、利尿薬の是非について述べてください。
4)周術期危機管理
①晶質液の大量輸液に反応せず出血性ショック状態が遷延している。交差適合試験を行った血液を入手するまで何を投与しますか。
②輸血による溶血が疑われた際の管理について述べてください。
1)術前評価と管理
①この患者の術前状態における問題点を重要と思われる順に列挙してください。
・ショック状態
・呼吸困難
・フルストマック
・肋骨骨折
・貧血
・ショックによる精神症状
2)麻酔法および術中管理
①麻酔導入・気管挿管の方法を選択し、その手順を述べてください。
・フルストマックかつショック状態なので意識下挿管をしたいところだが、興奮状態であるためおそらく不可能。迅速導入で行う。
・酸素化を十分に行ったあと頭高位に。輪状軟骨圧迫下に薬剤投与。
・少量プロポフォールあるいはケタミンとロクロニウムを使用する。
②気管挿管後、肺の換気がしだいに困難になってきた。考えられる原因について述べてください。
・肋骨骨折による気胸の可能性
・腹腔内出血による横隔膜下からの圧迫
③どのような方法で麻酔を維持するか、その理由も述べてください。
・循環動態が安定するまでは、筋弛緩を十分効かせ、フェンタニル静注、ミダゾラム持続静注あるいは少量セボフルランで維持。BISモニターを使用。
・止血が得られ循環動態が安定してくるようであれば、適宜通常している麻酔に切り替えるか、そのまま維持。
3)術後管理
①回復室で心拍数110回/minでした。原因として何を考えますか。
・再出血による循環血液量不足、貧血
・疼痛
②術後の乏尿に対する治療手段、利尿薬の是非について述べてください。
・まず十分な輸液を行う。安易な利尿薬の投与は控える。
・十分量輸液を行い、バイタルが安定(低血圧や頻脈)しても尿量が増えてこない場合、レントゲン上心拡大が見られたり、CVPの上昇、TEEやTTEでボリューム十分と評価できた場合は、利尿薬を少量から様子をみながら開始。
・循環血液量が不足している場合に利尿薬を使用すると、尿量は増加(または不変)するが、腎機能悪化のおそれがある。
4)周術期危機管理
①晶質液の大量輸液に反応せず出血性ショック状態が遷延している。交差適合試験を行った血液を入手するまで何を投与しますか。
・HESや5%アルブミンなどの膠質液の投与。
・出血とバイタルがまったくコントロールできず、著明な貧血を認める場合は交差適合試験をパスして同型血を投与。同型血がない場合はA型B型ならO型MAP血を投与。ABならAまたはB型を投与。
輸血選択(専門医試験過去問題集より) | |||
患者血液型 | 赤血球濃厚液 | 新鮮凍結血漿 | 血小板濃厚液 |
A | A>O | A>AB>B | A>AB>B |
B | B>O | B>AB>A | B>AB>A |
AB | AB>A=B>O | AB>A=B | AB>A=B |
O | Oのみ | 全型適合 | 全型適合 |
②輸血による溶血が疑われた際の管理について述べてください。 まず・・・
・即座に輸血中止
・新しい輸液セットに変える(エラスタは刺したまま接続部で変える)
・採血し(輸液ラインとは対側で)、不適合血とともに輸血部で再検査。
・乳酸リンゲルを最速で輸液
腎不全への対処
・輸液
・ドパミン3~5γ
・利尿薬投与(フロセミド)
⇒1ml/kg/h以上の尿量を確保
・利尿が得られなければCHDFを。
・適宜電解質補正(特に高K血症に注意)
・アシドーシスやDICが認められれば適宜対処
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