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2012年3月4日日曜日

48回麻酔科専門医試験:口頭試問2-1


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65 歳の男性。身長168cm、体重85kg。腎動脈分岐部付近から
総腸骨動脈に及ぶ大動脈瘤に対し人工血管置換術が予定され
た。5 年前に大動脈弁置換術を受けた。10 年前よりカプトリル
(ACE 阻害薬)、8年前より経口血糖降下剤、5年前からワルファ
リンを内服中。
質問
1)術前評価と管理
①この患者の術前での問題点を挙げてください。
②手術に際し術前の抗凝固薬はどのようにしますか。
2)麻酔法および術中管理
①麻酔はどのように行いますか。
②術中の大動脈遮断により心血管系ではどのような生理学的変
化が予想されますか。
③腎動脈分岐部上または分岐部下で行うことで、病態生理上ど
のような違いが生じますか。
④大動脈遮断時にどのような薬剤を投与しますか。
⑤術中出血に対してはどのような準備をしますか。
3)周術期危機管理
人工血管吻合を終了し、大動脈遮断解除を行ったところ、急
激に血圧が65/40mmHg、脈拍45/分に低下し、Ⅱ誘導でST 上
昇を認めた。
①どのような病態が考えられますか。
②どのように対処しますか。



1)術前評価と管理
この患者の術前での問題点を挙げてください。
・肥満
・分岐部付近からの瘤⇒術中大動脈遮断部位によっては腎臓保護が問題となる
・5年前のAVR置換後⇒人工弁でワルファリン内服中
・高血圧
・糖尿病
・高血圧、糖尿病、大動脈瘤患者⇒IHDのリスクファクター
手術に際し術前の抗凝固薬はどのようにしますか。
・術前4〜5日前にワルファリン中止し、ヘパリン持続静注に変更。PT-INR評価。10000単位/dayから開始し、APTTを対照値の1.5〜2.0倍程度にコントロール(ACTで150〜180秒程度にコントロール)。ヘパリンは手術4〜6時間前に中止。
※補足※
術後は止血確認できればヘパリン再開し、経口投与可能になればワルファリンを再開。PT-INR>1.8程度になった時点でヘパリンを中止する方法がある。適宜モニター。
2)麻酔法および術中管理
麻酔はどのように行いますか。
・全身麻酔単独(術後鎮痛はフェンタニルによるIV-PCAで)
術中の大動脈遮断により心血管系ではどのような生理学的変
化が予想されますか
循環
・後負荷の急激な増大⇒左室壁張力↑、左室駆出率↓心拍出量↓ 
・心筋虚血の可能性
・腎血流量↓、PAWP↑、CVP↑
代謝性変化
全酸素消費量減少、全二酸化炭素産生量減少、混合静脈血酸素飽和度上昇、全酸素利用減少、呼吸性アルカローシス、代謝性アシドーシス。
腎動脈分岐部上または分岐部下で行うことで、病態生理上ど
のような違いが生じますか。
腎動脈分岐部上
・腎血流量の著明な減少⇒腎障害。遮断がながくなればコレステロール塞栓の可能性

腎動脈分岐部下
・腎血流量は保たれるが、それでも腎血管抵抗は75%上昇、腎血流量は38%程度減少。 
大動脈遮断時にどのような薬剤を投与しますか。
・抗凝固のためにヘパリン5000単位程度投与。ACT測定
・血管拡張薬(ニトロールなど)を投与
・特に腎動脈上遮断の場合は腎障害を最小限にするためフロセミドやマンニトール投与
術中出血に対してはどのような準備をしますか
・太い静脈ライン(16G〜)を確保。膠質液やアルブミン製剤、輸血の急速投与可能。
・自己回収血(セルセーバー)
・輸血確保(MAP血、FFP)

3)周術期危機管理
人工血管吻合を終了し、大動脈遮断解除を行ったところ、急
激に血圧が65/40mmHg、脈拍45/分に低下し、Ⅱ誘導でST 上
昇を認めた。
どのような病態が考えられますか。
・デクランプによる急激な後負荷減少による低血圧
・デクランプによる嫌気性代謝物の放出
・デクランプによる静脈還流量の一時的な減少
・低血圧による冠灌流圧低下による心筋虚血
どのように対処しますか。
・輸液or輸血の急速投与、昇圧薬の投与(フェニレフリンやノルアド)
・TEEによる左室壁運動の観察
・アシドーシスがあれば適宜補正
・血圧が回復してくれば冠血管拡張薬の投与(イソソルビドやニコランジルなど)
など
・術後シバリングで心筋酸素消費量が増加すればさらなる冠虚血を来す可能性があるので、体温保持も重要

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