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2012年3月20日火曜日

45回麻酔科専門医試験:口頭試問 症例8


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30歳男性。身長161cm、体重88kg。慢性中耳炎に対して右鼓室形成術が予定された。20年前にハロタン・亜酸化窒素・酸素による全身麻酔で鼠径ヘルニア根治術が問題なく施行された。実兄が3年前に全身麻酔中に悪性高熱を発症した。
質問
1)術前評価と管理
①この患者における悪性高熱発症の危険性の評価法、その他、麻酔科医として必要と思われる検査を列挙して下さい。
②悪性高熱について本人と家族にどう説明しますか。
2)麻酔法および術中管理
ある程度の危険を承知で、本人および家族が手術を希望したため、全身麻酔が予定された。
①どのような麻酔法にしますか。
②術前に準備しておくべきものを列挙してください。
③麻酔中に必要と考えられるモニターや検査を列挙してください。
3)術後管理
①幸い、今回の麻酔は無事終了したが、術後回復質で嘔気を訴えていた。どのような対処をしますか?
4)周術期危機管理
手術開始10分後から、心拍数120/minの洞性頻脈が持続している。膀胱温は37.8℃であった。
①頻脈の原因としてなにが考えられるか。
②この時のカプノグラムを示す。何を考え、どう対処しますか。






1)術前評価と管理
この患者における悪性高熱発症の危険性の評価法、その他、麻酔科医として必要と思われる検査を列挙して下さい
・以前問題がなくても、素因があるものとして対応する。
・筋生検でカルシウム誘発性カルシウム放出(CICR)試験要請であれば、揮発性吸入麻酔薬と脱分極性筋弛緩薬は禁忌。
・筋生検で陰性であればMHは否定的ではあるが、25%はCICR検査陰性であるようなので注意が必要。
・筋生検は最近は術中に行われることが多い。
悪性高熱について本人と家族にどう説明しますか
・麻酔の薬(特に吸入麻酔薬と一部の筋弛緩薬)が体にあわないために起こる死に至ることもある病気であること(治療しなければ致死率50%以上、特効薬使用でも5%)
・遺伝性疾患であるため、肉親に既往のある患者がいれば本人も発症する可能性があること。
・最近使用されている麻酔薬(静脈麻酔薬など)は安全に使用できることがわかっているのでそちらの方を使用すること。
・いつ悪性高熱が発症しても対応できるように準備と管理を行なっていくこと。
をわかりやすい言葉で。
2)麻酔法および術中管理
ある程度の危険を承知で、本人および家族が手術を希望したため、全身麻酔が予定された。
どのような麻酔法にしますか
・プロポフォール(100%安全)、レミフェンタニルによるTIVA
術前に準備しておくべきものを列挙してください
・スタッフ間での情報の共有
・ダントロレンの確保(溶解用蒸留水を)
・冷却生理食塩水や輸液の準備
・高流量酸素で洗い流した新品ソーダライム
・高流量酸素で洗い流した麻酔器(気化器は取り外しておく)
・各種循環作動薬、メイロンなど
・太い静脈ライン、動脈ライン、中心静脈カテーテルなど
麻酔中に必要と考えられるモニターや検査を列挙してください
・動脈ライン
・中心静脈ライン
・体温(深部温、表面音)
・カプノーメータ  など
3)術後管理
幸い、今回の麻酔は無事終了したが、術後回復質で嘔気を訴えていた。どのような対処をしますか
・プリンペラン使用(悪性高熱誘発なし)
・ドロレプタン1mg使用(悪性高熱誘発ないが、最近はあまり用いないようです)
4)周術期危機管理
手術開始10分後から、心拍数120/minの洞性頻脈が持続している。膀胱温は37.8℃であった。
頻脈の原因としてなにが考えられるか
・術前からの脱水、発熱(可能性は低いと思いますが)
・不十分な鎮痛
・浅麻酔
・悪性高熱の発症
この時のカプノグラムを示す。何を考え、どう対処しますか
・資料なし
・このタイミングでカプノを出すということは上昇しているのでしょう。なので悪性高熱の発症を疑う。
対処:
・吸入麻酔薬を使用していれば即中止。高流量純酸素で換気
・術者に知らせ手術の中止または早めの終了を要請する。
・応援麻酔科医やスタッフを呼ぶ
・ダントロレンの投与:1バイアル20mgを60mlの蒸留水で溶く。初回量は1~2mg/kgを10~15分かけて静注。心拍数が低下、筋緊張が低下、体温低下まで5分ごとに1mg/kg/minで持続投与。日本での総投与量は7mg/kgだが、こだわる必要なし。
・強力な冷却を行う(中枢温が38℃以下まで)
・不整脈にはリドカイン。Ca拮抗薬はダントロレンとの併用で心停止の報告あり
・アシドーシスには重炭酸ナトリウム
・十分な輸液と利尿薬(フロセミド)を投与し2ml/kg/hr以上の尿量を得る。
・高カリウム血症にはGI療法を
・ショックに陥ればショックに対する処置を


※麻酔科トラブルシューティングAtoZ 高崎真弓ら編 pp.250-252など
※悪性高熱友の会の資料

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