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2012年3月25日日曜日

44回麻酔科専門医試験:口頭試問 症例7


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50歳男性。身長168cm、体重62kg。1年前に高血圧と診断された。右副腎に直径3cmの褐色細胞腫が発見され、腹腔鏡下腫瘍摘出術が予定された。心電図上、Ⅱ・Ⅲ・aVF誘導でST低下を認めた。
質問
1)術前評価と管理
①この患者の術前状態における問題点を重要と思われる順に列挙してください。
②術前に必要な検査を挙げてください。
③術前循環管理の要点を述べてください。
2)麻酔法および術中管理
①麻酔法を選択し、その理由を説明してください。
②必要な術中モニタリングをあげ、その理由を説明してください。
3)術後管理
①術後鎮痛の方法を具体的に説明してください。
4)周術期危機管理
①全身麻酔で管理し、血圧140~160/70~90mmHgで安定していたが、腫瘍剥離中に突然、血圧240/120mmHgに上昇した。対処法を述べてください。
②腫瘍血管を遮断すると血圧が低下し始め、70/38mmHgとなった。必要な処置を説明してください。






1)術前評価と管理
この患者の術前状態における問題点を重要と思われる順に列挙してください
・褐色細胞腫の手術
・心電図上ST変化(虚血?、左室肥大?)
・高血圧
術前に必要な検査を挙げてください
・血中、尿中カテコラミン(ノルアドレナリン優位型かアドレナリン優位型かの把握)
・循環血液量測定
・心エコー、Holterで不整脈のチェック
・一般採血
術前循環管理の要点を述べてください
・2週間前よりαブロッカー(プラゾシンなど)で血圧を下げ、ノルアドレナリンのα作用による高血圧と循環血液量不足を是正する。
・頻脈や不整脈が出現する場合はβブロッカーを使用する(α遮断薬投与した後に)
2)麻酔法および術中管理
麻酔法を選択し、その理由を説明してください
・硬膜外麻酔併用全身麻酔。現在特に推奨されている麻酔法はない。日頃なれた麻酔法で。
必要な術中モニタリングをあげ、その理由を説明してください
・動脈ライン(フロートラック)、中心静脈ライン(プリセップ)またはSGカテーテル。TEEも。
・腫瘍操作によりカテコラミンが過剰分泌されるために、発作的な血圧の上昇や不整脈が誘発されるため。
3)術後管理
術後鎮痛の方法を具体的に説明してください
・硬膜外カテーテルを留置していれば0.2%ロピバカインとフェンタニルによるPCEA。
・なければフェンタニルによるIV-PCA。
・近年腹腔鏡下で手術することも多く、術後痛はあまり強くないのでNSAIDs中心でもよいかもしれない。
4)周術期危機管理
全身麻酔で管理し、血圧140~160/70~90mmHgで安定していたが、腫瘍剥離中に突然、血圧240/120mmHgに上昇した。対処法を述べてください
・フェントラミン(α遮断薬)
・ニカルジピン(Ca拮抗薬)
・ニトロプルシド
・PGE1製剤
・ランジオロール(超短時間作用性β遮断薬)などが用いられる
腫瘍血管を遮断すると血圧が低下し始め、70/38mmHgとなった。必要な処置を説明してください。・各種データや所見を参考にしながら十分に補液を行う。
・カテコラミンを使用し血圧を維持する。

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