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62 歳の男性。身長160cm、体重50 ㎏。火傷で緊急搬送された。顔面、前頚
部、胸部、両上肢がII 度~III 度、約35%の熱傷、開口は1 横指程度。意識
は清明、呼吸循環は比較的安定している。慢性腎不全で血液透析を週3 回
行っていた。
質問
1) 術前評価
①気管挿管のための準備と手順を簡単に述べて下さい。
②無事に気管挿管され、その後、ICU で人工呼吸、輸液管理、持続血液浄
化療法が行われました。受傷8 日目に植皮術が予定されました。術前の問題
点を述べて下さい。
2) 術中管理
①麻酔管理上の注意点を述べて下さい。
②術中34.5 ℃と低体温をきたしました。低体温が生体に及ぼす影響につい
て述べて下さい。
③術中出血量が多く、輸血を考慮しています。術前のHb は11 g /dl でした。
どの程度のHb 値になった際に輸血しますか。
④どのような血液製剤の投与が望ましいと考えますか。
⑤術中突然不整脈が出現し心停止となりました。血清K 値が8.0 mEq /L で
した。どのように対処しますか。
3) 術後管理
①術後ICU 管理となりました。植皮部位に感染を合併し、入室期間が1 か月
を超えてしまいました。その間プロポフォールで鎮静していました。Propofol
infusion syndrome について説明して下さい。
1)術前評価
①気管挿管のための準備と手順
挿管方法:開口がほとんどできていないため、通常の喉頭鏡やAWSは使用不可であることから、意識下の気管支ファイバー挿管が最も選択しやすいと考えられる。前頸部にも熱傷があることから気管切開も第一選択とはなりにくいと思われる。
経口か経鼻かは固定性を考えると後者が選択しやすい。
準備: 4%リドカイン10ml+エピネフリン0.2〜0.5mlを混ぜたものを綿棒につけて鼻腔〜咽頭まで合計4回ほど入れる。3〜4回目は太めの綿棒を。
軽度鎮静のためにはフェンタニル100〜200mcgを分割投与。
チューブは6.5〜7.0mmのスパイラルチューブを使用。チューブ先行法で行う(これは施設や術者の好み)。
②受傷8日目での植皮術の術前問題点。
・慢性腎不全(透析中)
・熱傷のため接合部外Ach受容体が増加しており、非脱分極性筋弛緩薬の感受性が低下し、(もしこの症例で使用するなら)通常よりも大量の筋弛緩薬が必要とされ、作用時間も短縮する。なおこの状態は25%以上の熱傷で生じるらしい。また、スキサメトニウムに対して異常反応(高カリウム血症など)は受傷後24〜48時間より熱傷治癒後1〜2年間続くため、使用には注意が必要(使用しないと思うが)。
・7日以降は肺炎やARDS、敗血症、多臓器不全などの合併症が生じうる。
2)術中管理
①麻酔管理上の注意点
・通常よく用いられる全身麻酔導入薬(プロポフォールやチオペンタールなど)は、熱傷による循環血液量減少、低アルブミン血症によるタンパク結合性の低下などにより過度の血圧低下を来しうるので注意が必要。ケタミンは交感神経を刺激し、血圧低下をきたしにくいためよく用いられる(精神症状予防のため少量のプロポフォールやベンゾジアゼピンなどと併用する)。
・ただし、回復期では分布容積・代謝率の増加により必要量は増加する。
・今回は既に挿管されているため、ベンゾジアゼピンや吸入麻酔薬で緩徐に導入してもよいと思われる。
・適切にPEEPを使用し、低酸素血症や肺炎の原因ともなる無気肺を予防する。
・止血で使用されるボスミンにより、血圧上昇、頻拍、不整脈、肺水腫が起こりうる。
・広範囲植皮では大量に出血することもあり、太めの輸血ルートを確保し、輸血のタイミングを失わないようにする。
・体温の維持に注意する。室内の温度や輸液、消毒液の加温、温風式加湿器などを使用する。
②低体温が生体に及ぼす影響
- 疼痛の増強
- 心合併症の発生率3倍
- 血液凝固障害、出血量の増加
- 免疫機能の低下、術後感染率の増加
- 薬物代謝の遅延、麻酔からの覚醒遅延 ・・・など
当院ではHb7~8程度になった場合に外科医と相談の上輸血を行なっていますが、急性の出血の場合は検査を待たずに輸血に踏み切ることも必要。
④望ましい血液製剤
循環血液量の喪失度合いと輸血製剤の選択を聞いているのでしょうか・・・?
⑤高K血症への対処
※治療のポイントは、
①伝導遅延などの心臓に対する影響を軽減させ、
②細胞外から細胞内へのカリウムの移行を促し、
③体内総カリウム量を減少させる、こと
□グルコン酸カルシウムの投与
□グルコース・インスリン療法(具体的投与法は下記)
□ 炭酸水素ナトリウムや利尿薬(フロセミド)の投与
□過換気にする
□イオン交換樹脂(ケイキサレート50g+ぬるま湯200mlを注腸。効果発現は1時間)
□透析
□β刺激薬投与など
※グルコース・インスリン療法(効果発現まで30分以内)
いろいろなやり方があるが・・・
□10%ブドウ糖200ml+速効型インスリン5単位(30分でDiv)
□10%ブドウ糖50ml+速攻型インスリン5単位を様子を見ながらDiv
□10%ブドウ糖500ml or 50%ブドウ糖200mlに速攻型インスリン10単位を様子みながら。
□高血糖下ではインスリン1単位に対してブドウ糖2gとする。
3)術後管理
①propofol infusion syndrome
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プロポフォール5mg/kg/h以上を48時間以上投与した場合に発生する、まれではあるが、致
命的な症候群であり、小児だけでなく成人でも報告されている。臨床的には急性心不全を伴
う心筋症、代謝性アシドーシス、骨格筋障害、高カリウム血症、肝腫大、敗血症など。この
症候群ではミトコンドリアへの遊離脂肪酸輸送が阻害されており、ミトコンドリアの呼吸鎖
が障害されるために遊離脂肪酸の代謝不全を生じて発症すると理解されている。
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