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2015年10月8日木曜日

体験談④(第54回麻酔科専門医試験)



はじめに、これは非常に要領が悪い人間の受験期です。要領がよいと思う方は読んでも意味がないかもしれません。

筆記試験
 試験というものが苦手で今までの人生で何度も痛い目を見てきたので、1年前の9月から準備をはじめました。まわりにひとりも受験生がおらず情報をまったく持っていなかったのでネットで情報検索しこちらのサイトにたどりつきました。はじめから終わりまで不安でたまりませんでした。過去問は7年分を4-5回解きました。正直なところ、1,2回目では問題の意味すら全くわからず、ただひたすら解いては間違え解いては間違え、といった感じでした。はじめのうちは正答率10%ぐらいだったと思います。
 気づかないうちに少しずつ少しずつポイントがわかってきて、3回目くらいからは正答率も上がるようになってきました。それに伴い青本を読みこみました。時間も根気もなくミラーのような成書を読むことはできなかったので、青本で付け焼刃の知識を詰め込みまくりました。はじめはどうしても進みが遅く、110問解くことからスタートし、4回目ぐらいには150-100問、5回目には1100-200問解くようにしました。タブレットを持ち歩き、わからないことはネットで調べました。(ネットには間違ったこともたくさん載っていますのでひとつのページを信用しないようにはしていました。)何度も間違えるところはノートに太いマジックペンで書き出し覚えるようにしました。
 試験直前までずっと仕事の合間に職場で勉強し、退勤後はカフェで夕食をとり勉強しました。1日に合計2時間程度勉強するのがやっとでした。休みの日はできるだけ勉強に充てました。最後の1週間はシルバーウィークがあったことも幸いでしたが休みの日は図書館に行って開館から閉館までいました。受験生とおぼしき若い方々や資格試験を受ける方々がたくさんいて、とても励みになりました。この最後の1週間は本当に精神的にもつらくほとんど泣きそうになりながら勉強していました。
 PDFファイルの計算問題の解説は非常に役に立ちました。計算問題はかなり意味不明なところもありますが、絶対に捨てられないと思い自分なりに理解できるまで解きました。そのおかげか、新作チックな計算問題が出ましたが解けたように思います。また、青本のTEE図説のページも非常に参考になり、あれを基に自分でもTEEの本を開いてイラストを書き知識の再確認をしました。とにかく要領が悪いので私生活のかなりの部分を犠牲にして取り組んだ受験でしたが、結果がついてきたので報われたと感じています。

 当日はA問題はほとんど過去問でしたので、90%以上は正答できていると思います。B問題は完全な新作問題で、勉強不足ですのでちんぷんかんぷんでした。が、解きながらもよくできた問題だな(悪問もありますが)と感じました。終わってミラーを斜め読みし、やはりミラーから出題されるのだなと思いました。自信を持てる解答は20%程度だと思います。試験中ももしかしたら人生終わってしまったのか?とも思いましたが諦めてはいけないといましめ頭の記憶を呼び覚ますようにしました。
 B問題はおそらく日頃深く勉強しているかどうか見ているのだと思います。得点率が低くても合格できますが、今後勉強しなさいと示唆しているのでしょうか。
 C問題は臨床問題で、おそらくそこまで難しくなかったのだと思います。が、知識の甘さが出てしまいわかるようでわからない問題がたくさなりました。恥ずかしながらこちらも正答率は20-30%のような気がします。実際の臨床では正解が複数あることもありますから、なにが正解か終わってからもわからずどんよりした気持ちのままでした。他の方も書かれていると思いますが、とにかくA問題をはずさなければ筆記は合格すると思います。

口頭試問と実技試験
実際に準備にとりかかったのは、筆記前最後の1週間のうち1日と筆記が終わってからの日々のみでした。青本のみを頼りました。本番前日には声に出して練習しました。青本の過去問を解くうちになんとなく傾向がわかってきたので、青本に載っている分は全部目を通したほうがよいと思います。実技についても、特にPNBについてはyou tubeを何度も見てイメージを膨らませました。
神戸ポートピアホテルの本館89階を借り切っておこなわれていました。客室のベッドが取り払われ試験会場になっていました。待機室(2階宴会場)から業務用エレベーターで一定人数ごとに上にあげられます。待機室では緊張のあまり完璧に末梢がしまってしまい、いわゆるプレショック状態になっていました。客室階にたどりつくと、スタッフの方々が大勢いて誘導してくれますので完全にベルトコンベアーに乗って方々で検品されている感じでした。不思議とベルトコンベアーに乗ってしまったら末梢もあたたまりなぜだか勇気がでてきました。これが一番の勝因だったかもしれないです。いつもオペ室でやっている通りの自分を出せばきっといける!と思いました。

口頭試問
入室前に5分時間があり、二つの症例を書いた紙を渡されます。ボールペンでメモを取ることができます。これは聞かれるだろうなということはある程度予測がついたので、本番で頭が真っ白になってもいいように必要な検査や身体所見や注意事項などをメモしておきました。意外とたくさんメモできました。試験官は二人で非常に優しい先生がたでした。

 ①生後1か月の子の肥厚性幽門狭窄症と②高齢でOMI他院フォロー中+脳梗塞後遺症なし抗血小板薬内服のASが出題されました。

 ①では術前に診るべき身体所見、検査所見、電解質をどのくらいの数値まで補正するか、補液の速度は、挿管チューブのサイズは、導入するときの注意点は、などが質問されました。①の中に接遇問題が含まれていて、すぐ手術をしたい外科医にどう対処するかというものでした。知識を問う質問の中にははずしてはいけない(チューブのサイズや導入するときにRSIで導入するなど)国試の禁忌問題のようなポイントはあると思いますが、あとは普段自分がどのように赤ちゃんの麻酔を管理するかを述べられれば大丈夫そうでした。間違っていても評価はされているような気がしました。
 ②でも術前に必要な情報、導入方法とその薬剤(いつもリアルに使っているものでよいそうです)、術中管理で気を付けることなどを質問されました。導入方法ですが、この症例ではかなりの圧較差がありましたので、いつもプロポで導入しますが量は少なくします、ですとかプロポなしでセボだけ嗅がせて導入することもありますなど、それこそ実際にやっている方法を披露しました。若干時間が余ったのですが、こういうところを気を付けたほうがいいよと講評をいただきました。優しく「先生はできているから、次も頑張って」と言われ元気づけていただいて退室しました。その一言は神に思えました。
 間違った答えを言ってしまってもひるむ必要はないと思います。普段実際に自分の頭で考えて麻酔を計画しているかを重視して見られているような気がしました。そしてとにかく思いついたことは何でもしゃべることが重要だと思います。沈黙は禁です。

実技試験
こちらは4つの部屋にわたって試験を受けます。どの部屋も試験官は二人で二人とも採点していました。とにかく、まったくもって時間がありません。答えに悩んでいる時間はまったくありません。よどみなく答えることが大切ですが、ふだん麻酔をかけていればなんなくできると思います。

    ブロンコキャスの挿管+気管支ファイバー
患者の年齢と右肺全摘予定であることが読み上げられ、チューブのサイズを選択させられます。実際にブロンコキャスが出てきます。組み立てはすんでいました。喉頭鏡で人形に挿管するのですが、喉頭がベロベロしていてかなり時間がかかってしまいました。喉頭蓋が丸まってしまって全然持ち上がらなくて自分でも笑ってしまいました。なんとか挿管し、その過程をつぶさに口で説明しながら左用チューブを左の気管支までもっていきました。聴診による確認は省略され、すぐにブロンコファイバーの操作にうつりました。青カフが分岐部でチラ見えする状態にすることははずせないポイントだと思います。そのあと右の上葉気管支を出してくださいと言われ、自信なさそうに説明しはじめたところ時間がなくなってきたのか、もうよいので左のB6を出してくださいと言われ、考えていたところでタイムオーバーとなってしまいました。もはや落ち込む余裕すらなし。

    カイザーの硬膜外麻酔+TEE
穿刺高についてきかれました。あとは説明しながらやってくださいと言われ、手袋のサイズを聞かれ手袋装着から試験スタートでした。今回は腰椎でやってくださいと言われ左側臥位の人形の前に座りました。実際に刺せる人形でした。消毒して(消毒内容は聞かれず)、キシロカインで局所麻酔して(…と説明していたら患者さんにも声かけてねと言われてしましました。説明しながら、声掛けしながらなんて非現実的ですし、実際やろうとするとけっこう難しいですね。)本物の針をMedianで刺して、深さ2㎝で止めて、生食のシリンジ(実はいつもは局麻入りのシリンジで刺してますが)をつけて抵抗消失法でおこない、抵抗がなくなったところで…と説明しながら手技をすすめました。チュービングまでおこない、何㎝入れるか質問されて終了でした。TEEではfour chamber viewTG basal SAXを描出してくださいと言われ、当然なんなく描出できました。four chamber viewでは右室とM弁前尖を出してくださいと言われました。それだけでタイムオーバーでした。これも、おそらく日頃からTEEを使い慣れているかも含めて見ていると思います。実は久々でしたが、構え方など本能的に覚えていましたので今までの経験に心底感謝しました。

 ③ボランティアさんでTAPブロック+腕神経叢ブロック鎖骨上アプローチ+人形で右内経静脈CV挿入とこんにゃくゴボウでの神経ブロック
TAPブロックは実際にやったことはないのですが、何度も何度もシミュレーションしたのでいかにもやっている「風」に答えられました。構造物について説明しどこに局麻を入れるか、ただそれだけです。鎖骨上アプローチについては実際に画面を出し構造物について答えます。斜角筋はどこ?とも聞かれましたが出した画面では出しづらかったので少し上に振って斜角筋アプローチ近くまでプローベを持っていき示しました。CV挿入は当然エコーガイド下です。動脈と静脈の見分け方についても聞かれます。ガイドワイヤーを挿入し、ワイヤーを何㎝挿入するか聞かれて終了でした。問題はこんにゃくとゴボウです。こんにゃくのようなものに中のこのへんに神経がはいっていると言われプローベを当ててみると、ゴボウのような線のようなものがでてきました。ブロックしてくださいと言われましたが、神経=○の集まりと思っていたので何度も「これって神経なんですよね?」と聞いてしましました。もしかしたらプローベの向きを90度変えれば○の集まりになったのかもしれませんが、本番では思いつくわけもなく仕方ないので、平行法で刺しますと言って刺し神経のそばまで針をすすめて終了しました。実際にはありえないブロックですね。この部屋は本当に忙しく、早口でしゃべりまくらないと4つの手技はできなさそうでした。

 ④始業点検かと思いきや、ACLS
脊麻で管理されていた人が心停止したパターンでした。頭が働かなくなっていて、すっかり挿管しているものと思い込むヘマもありましたが穏やかに指摘していただき修正できました。PEAの波形を出されて、さあどうぞと。試験官が気道を確保することになったので、自分は心マをしました。聞かれもしませんでしたけど、押す場所・回数・深さ・戻りについてすべて勝手に答えました。その間302で呼吸をサポートすることも言いました。アドレナリンを用意してもらい、IVしたら生食20mlで後押しし上肢を拳上することも勝手に言いました。アドレナリンは3分おきということも言いました。心マは2分おきと言うのはなんと忘れてしまいました。そうこうしていると波形がVfになっていてさあどうする?と。DCかけますので二相性なら150Jにしてくださいと言うと少ないJでショックをかけさせられます。手元でチャージさせられました。そのあとからがパニックです。戻らなかったのですが、心マを続けるところをなんと再度DCをかけるという大失態。あとで思い出して青ざめました。幸い、そこでタイムオーバー。ちーん、でした。

口頭試問が終わって、もはや茫然自失でエレベーター(こちらは宿泊客用のふつうのエレベーター)に乗ってロビーに帰りました。帰ったらなんだかあの世からこの世におりてきたような気がして不思議な感覚でした。


これから受験なさる方々に言えることは、過去問と青本と、そして日々の臨床を大切にしてくださいと言うことです。それが、受かるためのすべてだと思います。

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