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2012年4月7日土曜日

まとめ:覚醒遅延の対処


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※最も頻度が多いのは麻酔薬・筋弛緩薬の効果遷延によるもの。
※十分な時間が経過しても意識レベル低下が継続するようであれば、呼吸不全代謝異常中枢神経系の障害によるもの、手術自体の影響などの鑑別が必要になる。

原因別対処

麻酔薬・筋弛緩薬などの作用遷延・残存によるもの
薬剤(麻酔薬・筋弛緩薬)の過量投与
肝機能・腎機能障害、低心機能患者では相対的過量投与になりやすい。
薬物相互作用による作用増強
ベンゾジアゼピン系薬物や麻薬、吸入麻酔薬、筋弛緩薬の相互作用による
薬物の作用拮抗、あるいは時間的経過で覚醒する
呼吸不全によるもの(筋弛緩・麻薬過量投与による影響も含む)
低酸素血症
高二酸化炭素血症、CO2ナルコーシス
⇒特にCOPDなどの呼吸器系疾患合併患者では要注意
適切な人工呼吸の継続を行う



代謝異常によるもの
低血糖(特に糖尿病患者や小児で)
異常な高血糖(HONKやDKAなど)
電解質異常(特に低Na血症など。TURを全身麻酔下で施行した場合など要注意)
適切な補正を
低体温低体温自体に麻酔効果がある。また麻酔薬や筋弛緩薬の効果も増強する
ブランケットや温風式加温装置で復温
甲状腺機能低下症(コントロール不良だと基礎代謝が低下しており、心拍出量低下や低体温に陥りやすい)

中枢神経系の障害によるもの
脳神経外科手術、心臓外科手術、頸動脈手術(CEA)などでは要注意
術中術後脳出血、脳梗塞、低張液の過剰輸液による脳浮腫など
疑ったらCT、MRIなどの検査を施行。異常がみられれば神経内科あるいは脳神経外科に緊急コンサルテーション

手術自体の影響
大量出血、大量輸血など循環動態に大きな変動があった症例
長時間に渡る困難な脳神経外科手術や心臓外科手術、肝切除術
器質的疾患を除外し、時間的経過を見る

その他
高齢者:薬物の臓器クリアランス低下、分布容量の増大により血中濃度が増加傾向
肥満:主に肺胞低換気により揮発性麻酔薬の効果遷延が起こる。十分な人工呼吸の継続


実際の対処の手順
循環が整っているのがまず前提条件(特に長時間手術、循環動態が大きく変動した手術など)
・麻酔薬の残存効果を考え、時間の経過を見る。その際、瞳孔所見は確認しておく。
・血液ガスを採取し、低酸素血症や高二酸化炭素血症、電解質異常の有無を確認。
・神経学的障害が疑われる症例ではCT、MRIを施行
・神経学的異常や呼吸状態に異常がなければ、覚醒するまで適切な人工呼吸を行いながら集中治療室で経過を見る。



参考文献、書籍、Web
1)MGH麻酔の手引き p681
2)麻酔科シークレット第2版 p233, p524
3)麻酔科トラブルシューティングAtoZ p558-559 など


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