70歳女性。身長150cm、体重65kg。2ヶ月前より右下顎部の腫脹と痛みがあり、下顎骨の腫瘍と診断され下顎骨切除の6時間の手術が予定された。50歳の時に両下肢静脈瘤と診断され、60歳の時に舌癌により舌の部分切除および頸部郭清術を受けていたという既往歴がある。
質問
1)術前評価と管理①この患者の術前状態における問題点を、重要と思われる順に列挙してください。
②挿管困難の予測法について述べてください。
2)麻酔法および術中管理
①気道確保困難の可能性がある場合にどのような方法で気道確保をしますか。
②どうしても挿管ができない場合の処置について述べてください。
③導入中、換気も挿管もできない状態になった場合の対処について述べてください。
3)術後管理
①術後、創部(下顎)の腫脹が認められた。抜管をどう判断しますか。
抜管が可能かまたその理由について述べてください。
4)周術期危機管理
①手術の二日後にはじめて歩行しトイレに行って帰った後、気分が悪くなり、血圧低下、意識消失、呼吸停止になった。病態とその鑑別法を述べてください。
②周術期の肺塞栓の予防法について述べてください。
1)術前評価と管理
①この患者の術前状態における問題点を、重要と思われる順に列挙してください。
・舌癌手術後、下顎骨腫瘍、頸部郭清後⇒全てが気道確保困難を予測させる!
・下肢静脈瘤(DVTリスク)、
・高齢
・(比較的)長時間手術
②挿管困難の予測法について述べてください。
睡眠時無呼吸症候群あり
□極端な上顎切歯の突出(出っ歯)
□小顎
□下顎を最大に前方へ出した場合の下顎切歯の位置が上顎より前に出ない(アイーンができない)
□Mallampati分類classⅡ以上
□頸部後屈制限
□甲状腺手術後
□頚椎手術後(特に固定術)
□頸部リンパ節郭清後
□甲状オトガイ距離3cm以下
□太く短い頸
□顎がを胸につけることができない、など
2)麻酔法および術中管理
①気道確保困難の可能性がある場合にどのような方法で気道確保をしますか。
・まずは補助の麻酔科医を事前に要請しておく。
・スタッフ間での情報の共有
・気管支ファイバーあるいはAWSによる意識下挿管(少量フェンタニル使用)
②どうしても挿管ができない場合の処置について述べてください。
※換気ができるという設定ですよね?
・持ちうるべき手段を講じても挿管できない場合は、マスク換気をしつつ覚醒を待つ(スガマデクスによる緊急拮抗も可)
③導入中、換気も挿管もできない状態になった場合の対処について述べてください。
・LMA挿入⇒換気ができればLMAを通じて挿管(最近のLMAはほとんど挿管用LMAとして使用可能)
・それでも無理な場合は緊急輪状甲状間膜穿刺⇒ジェットベンチレーションあるいは気管切開キットを用いて緊急気管切開。
3)術後管理
①術後、創部(下顎)の腫脹が認められた。抜管をどう判断しますか。
抜管が可能かまたその理由について述べてください。
・術前から気道の状況が通常では無い上に、腫脹があるため抜管後の気道確保に確証が持てない⇒挿管したまま集中治療室管理(腫脹が引くまで)
4)周術期危機管理
①手術の二日後にはじめて歩行しトイレに行って帰った後、気分が悪くなり、血圧低下、意識消失、呼吸停止になった。病態とその鑑別法を述べてください。
・2〜3日間の臥床後始めての起床・歩行後に生じている急激な呼吸循環変動であり、DVTによる肺塞栓が最も疑わしい。
・まずは迅速なCPRが施行されなければならない。 同時にTEEくらいはできるでしょうか。
※その他の鑑別
・脳出血、脳梗塞(急激な血圧低下は説明しにくい)
・致死性不整脈(VT、VF)
・心筋梗塞
・急性大動脈解離⇒心タンポナーデ、冠動脈におよび解離
・緊張性気胸
②周術期の肺塞栓の予防法について述べてください。
・手術内容に応じた予防法有り。
弾性ストッキング(ES)、間欠的空気圧迫法、ヘパリンなど。
肺血栓塞栓症の簡単なまとめ参照
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