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2012年10月24日水曜日

体験談①(U先生)


U先生から頂いた体験談です。基本的にそのまま引用します(^^)

・・・・・・(ここから引用)・・・・・・・

麻酔科専門医試験体験記(口述試験、実技試験)

記憶の新しいうちに記録しておきます。

私は10月4日、8時10分にポートピアホテルの「のじぎく」が待機場所になりました。朝も早いことと、試験会場と宿泊場所が同じ方が何かと便利だろうとポートピアホテルに宿泊することにしました。
学会からも予約できるという話でしたが、「まずはじゃらん経由で宿泊予約をしておき、学会からの予約の方が安ければキャンセルすればいいや」と思い、まずは予約を。しかし、3連休ということもあり、一泊2万円もするエグゼクティブフロアしか空いていませんでしたが一応押さえておきました。そして学会からはKNT(近畿日本ツーリスト)を通じて宿泊予約ができるとわかり、しかも13000円とじゃらんに比べて安かったのでKNT経由にしようと思いました。しかし、KNTに電話してみると「予約確定の連絡は個別対応になるため、連絡はしない。試験直前には郵送しますので、そこでどこに取れたかを確認してください」と言われたため、KNT経由をキャンセルし、結局自分で予約したエグゼクティブフロアに宿泊することとしました。
結果的には自分で取って正解でした。なんと、当日は「ホテルの手違い(?)」でエグゼクティブフロアのスイートルームしか空いていないと言われ、スイートに泊まることになりました(ラッキー)。夕食は近くのローソンで弁当を買ってきて、勉強しながら食べる程度でした。
寝不足防止のため、12時頃にはベッドに入りました。
が、肝っ玉の小さい私は結局寝付けず、3時頃にようやくウトウトし始めました。
試験当日、6時に起きてシャワーを浴び、25階で軽く朝食を取ったあと、7時50分に部屋を出ることとしました。集合時間の30分前から待機場所に入れるのは知っていたので、少し早目に部屋を出て、待機場所でもう少し勉強すればいいや、と安易な考えで出発しました。エレベーター待ちやトイレに行ったりして、結局8時ちょっと前に待機場所に到着。なんと、殆どの受験生がすでに部屋に入っており、かなり異様な雰囲気でした。
みんな、一言も発することもなく一心不乱にテキスト、iPad等を眺めており、時間が来るのを待っていました。
8時10分に説明開始。手元に置いてある紙に注意事項等が書いてあるので、ほぼ、それを読むだけの説明でしたが、追加事項が一点ありました。それは「試験終了後も変なネットに書き込まないように」ということでした。わたしは2chかと思いましたが、本当の意図は不明です。その説明が終わったらすぐに部屋を出て、業務用エレベーターで9階(だったかな?)に移動。客室の端から端までずらっと椅子が並べられ、これまた異様な雰囲気でした。9階(おそらく8階も)の部屋を全部借り切って、3人1グループに対して8個の部屋を割り当てられていたようです。まず、3人が同時に口頭試問を受けるための3部屋、各々実技試験を受けるための4部屋、4つめの実技試験を受ける前の待機部屋です。
タイムテーブルのイメージとしては下の様になっています(※ブログに表示できませんでしたm(_ _)m)



まず、口頭試問を受ける部屋の前に椅子が置いてあり、そこにタイムキーパー(係)のお姉さんと二人で座りました。

「では5分間で読んでください。メモ等はしていただいても構いません」
「はい」
症例1 4歳(?)の小児。頭痛、吐き気で来院。脳腫瘍摘出術予定
症例2 中年男性、右背部に痛み(帯状疱疹)

これだけで一体みんな何をメモしているんだろう?
一心不乱にメモをしている受験生が多い中、何をメモしようと悩んでいるだけで時間が過ぎ去りました。せいぜい、小児なので挿管チューブの太さと深さを計算してメモしたのと、ジャクソンリース回路を使用した時の利点、欠点くらいしか書けませんでした。
5分間はあっという間に過ぎ、係の女性が持っているタイマーがピピピピピと鳴ると、メモを取り上げられました。
部屋に入ると客室からベッドを取り除いてあり、窓を背に試験官(2名、男性:A、女性:Bとする)がこちらを向いて座っており、入り口近くにはTVモニターが設置されていた。

私:「受験番号○○○○、daijiroと申します。よろしくお願いします。」
A:(にっこり笑いながら)「はい、よろしくね。じゃ、とりあえず座って。」
私:「はい。」
A,B共にすごく優しそうに見える。これはラッキー?

A:「では最初の症例です。まず、MRIを取ろうと思いますが、MRIで気をつけることは?」
私:「はい。子供なので、じっとしていられないため、全麻でMRI撮影を行うと思いますが、その際、金属製のものは使わない、ということです。」
A:「(大きくうなづきながら)うん、そうだね。じゃあ、ほかには何かありますか?」
私:「えっと~。気道管理についてはジャクソンリース回路を使いたいと思います。ジャクソンリース回路なら気道抵抗の上昇が把握しやすいメリットがあるからです。」
A:「うん。じゃあ、何に気を付けますか?」
私:「回路が長くなる可能性があるので、呼気の再呼吸を予防するために流量を低くしないこと、体動があると意味がないので鎮静と筋弛緩をしっかり効かせます。筋弛緩モニタも電極が金属製なのでMRIの時には使えないので。」
A:「(うなづきながら)うん、じゃあさっきも答えてもらったけどMRIで使えないものは具体的にはどんなものがありますか?2つ上げてください。」
私:「えっと、心電図のリードと、SpO2モニタです。」
A:「(またも大きくうなづきながら)うん、そうだね。」

試験官は何かの紙(おそらく質問事項と採点基準)と私を交互に見ながら、質問をしてくるが、右手がどう見ても「10」と書いてくれているようだった。しかも、正解を答えるとうなづきながら「うん。じゃあ次行こう。」と言ってくれ、非常にやりやすかった。

A:「じゃあ、実際に腫瘍摘出術を行うことになりました。周術期に気をつけるポイントは?」
私:「脳腫瘍なので、頭蓋内圧が上がっているため、内圧を上げないように管理するのが第一です。具体的には、やや過換気にしてPaCO225-30mmHgを目標にします。術野として問題がなければ頭部の軽度挙上、術中管理は吸入麻酔薬ではなくプロポフォールでのTIVAで管理します。あと、フロセミドやマンニトールを使います。ほかには胸腔内圧を上げすぎないようにすることです。
A:「うん、いいね。じゃあ次の症例行こう。」

ここまでは何とか答えられたような気がします。が、気が動転してて、ほかの質問もあったかもしれませんが忘れてしまいました。すいません。

B:「では次の症例です。」

とここで、モニターに右背部から腋窩にかけて肋骨の走行に沿った帯状疱疹の写真が映し出される。

B:「この診断は何ですか?」
私:「帯状疱疹です。」
B:「そうですね。では、帯状疱疹の時に使う薬は何ですか?」
私:「ゾビラックスです。」
B:「では、この患者さんにゾビラックスを使いましたが、痛みは引かないとのことでした。そういう時は何を使いますか?」
私:「………えっと、ロキソプロフェンを使います。」
B:「うん、そうですね。他に何か使いますか?」
私:「………他に、ですか?もし、ロキソプロフェンが効かないのであればモルヒネとかのオピオイドを使ってもいいかもしれません。帯状疱疹でオピオイドまで使うのはやり過ぎかもしれませんが…。」
B:「まあ、いいのではないですか?先生がその選択をしたのであれば使っても問題はないと思いますよ。」
私:(こんな答え方でもいいんだ)
B:「では、それぞれの副作用を答えてください。」
私:「ロキソプロフェンは消化管出血、長期投与時には汎血球減少、肝腎障害があり、モルヒネでは便秘、過量投与で呼吸抑制、悪心嘔吐があります。」
B:「いいでしょう。この患者さんに神経ブロックを行うことになりました。適応となるブロックを2種類答えてください。」
私:「ひとつは硬膜外ブロックです。」
B:「うん、それから?」
私:「…腹腔神経叢ブロックも違うし…、何が適応になるかな…。(と思いつく限りのブロックをつぶやくが、肋間神経ブロックは出てこなかった)」
B:「…」
私:「…」
B:「…」
私:「…」
B:「…出てこないですかね?」
私:「…はい。」
B:「答えは肋間神経ブロックなんですけど、やったことないですか?」
私:「はい。大学では多少ブロックもやりましたが、帯状疱疹に対しては全例硬膜外しかやってなかったので…。そもそも大学でもあまりブロックには力を入れてこなかったので(と勉強不足を棚に上げて大学のせいにし始めたが、どうなんでしょうか?)。」
B:「まあ、やってないなら仕方がないですね。ところで、それぞれのブロックにおいて合併症を答えてください。」
私:「はい。まず、硬膜外の方ですが、硬膜外血腫、神経損傷、感染、カテーテルの血管内迷入やくも膜下への迷入、それに伴うtotal spinalなどがあります。肋間神経ブロックは気胸、血胸、感染、神経損傷、局所麻酔中毒などがあります。」
B:「いいですね。」
A:「では、次の問題です。モニターを見てください。」

とモニターを見ると、そこには文章が映し出される。

内容的には
5歳の鼡径ヘルニア予定の患児
・入院後、手術5日前にインフルエンザの予防接種を受けていたことが判明
・麻酔科担当医として、主治医に手術を延期するよう説明する

A:「内容はわかりましたか?」
私:「もう少し時間をください。」
A:「いいですよ。私は主治医役ですね。ゆっくりでいいですよ。」
私:「(3回ほど読んで、ようやく意味を理解した。接遇問題だが、主治医と話をするんだとわかった)はい、分かりました。では始めます。えっと、インフルエンザの予防接種を受けた、とのことですが、確かに大規模studyとかはほとんどないため、ガイドライン等も整備されていないと思いますが、結論から言うと延期していただきたいので、親御さんにそのように説明していただけますでしょうか?鼡径ヘルニアは確かに大手術ではなく、予防接種の影響もほとんどないと思いますが、もし、万が一術後の発熱や原因不明の合併症が発症した場合、それが予防接種を受けたからなのか、それとも手術の合併症単独なのか、そのあたりをrule outすることが非常に困難になると思います。親御さんの気持ちを考えると、せっかく入院したのに手術もせずに退院とか、手術を延期するとかは申し訳ない気持ちがありますが、子供の命に関わる可能性もあるので、安全を期すために今回の延期については了承していただく方がいいと思います。」

自己紹介や挨拶、相手からの質問など、患者さん相手にするのとは違うのでいらないと考えて省略したが、あとから考えても、間違いではなかったようです。試験官のおかげかな?

A:「はい、わかりました。それで結構ですよ。」
私:「はい。…でもこんな感じでいいんですかね?」
A:「大丈夫だと思いますよ。」
B:「そうですね、大体いいと思います。」
私:「ありがとうございます。」
A:「では、もう少し時間があるので、座ったままお待ちください。」
私:「はい。」
B:「結果については心配しなくても大丈夫だと思いますよ。」
私:(おっと、これで合格?まさか、ひっかけ?)はい。ありがとうございます。」
A:「でも、緊張しますよね。」
私:「はい。あがり症なんで、手にも汗をかいてますし、喉がカラカラです。」
B:「実技の方も自信を持って頑張ってくださいね。」
私:「はい。」

とここで時間切れ。係の人が呼びに来たため、部屋から退室した。
本当に、雰囲気が良く、正解と思われる回答を答えると、すぐに「いいね!」がついて、次の問題に行ってくれたのでかなり当たりでした。名前もわかりませんが、ありがとうございました。

〈実技1 始業点検〉
次の部屋では試験官が2名と麻酔器(ACOMAの古いやつ)があった。

私:「受験番号○○○○、daijiroと申します。よろしくお願いします。」
C:「よろしくね。じゃあ、この部屋では始業点検をやってもらいます。ただ、残念なことに無い物があるので、指差しで『○○確認』と言ってくれれば、そこは点検した、と捉えますので。例えば、後ろ見てもらえばわかるけけど、ボンベ、ついてないし、他にもきちんと点検すればわかるから。」
私:「はい。」
C:「ちなみに、横にいる(試験官D)のは研修医の先生と思って必要なら指示を出してください。」
D:「先生、よろしくお願いします。」
私:「よろしくお願いします。」
C:「では始めてください。」
私:「(後ろに回り)まず、補助ボンベ良し。」
私:「(麻酔器の補助ボンベ用の流量計も指さし確認しながら)補助ボンベの流量計良し。」
私:「パイピングも目視でねじれもなく、接続も良し。中央配管からの流量も良し。」
C:「ちなみに中央配管の供給圧はいくらですか?」
私:「(麻酔器前面の供給圧モニタを見ながら)4MPaくらいですね。ここを見ればわかりますけど。」
C:「そう。見ればわかりますね。」
私:「酸素フラッシュ、笑気だけを流量上げても酸素の安全機構の働きも確認できました。空気も流量良し。気化器のダイヤルも良し。…気化器の中にセボが入ってないですね。」
C:「はい、じゃあ、そこは看護師に言って補充してもらいましょう。(Dに向かって)看護師にきちんと入れておくように言ってね。」
D:「はい、すいません。」
C:「いつも言ってるのに~。」

変な小芝居をはじめるが、時間もないので無視して次に行った。

私:「呼吸回路の組立はいいみたいですね。(リークテストをやりながら)リークテストもいいですね。酸素濃度計の校正もできている、と。ソーダライムは、と。」

ソーダライムを見ると、接続が不完全であった。

私:「えっと、ソーダライム、きちんとはまっていないので、これでは使えないですよね。」
C:「そうですね、研修医を後で叱っておきます。ダメじゃないか。」
D:「す、すいません。」

またも小芝居が…。これまた無視。

私:「あとは、人工呼吸器の点検ですが、手動から切り替えて、と、切り替えはどこでやるんですかね?」
C:「(ベンチレーターに切り替えながら)ここでやりますよ。」
私:「すいません。で、人工肺を付けて、人工呼吸器の点検を行います。…問題ないみたいですね。アラームもきちんと鳴る、と。次に酸素の接続を外した時にアラームがなるかも確かめます。」
C:「時間がないので、確かめたことにしましょう。」
私:「はい。では最後に余剰ガスの…。」
C:「余剰ガス、ないので、いいです。」
私:「以上で終了です。」
C:「はい、いいですね。これで終わりですね。この麻酔器はあまり使ったことがないですか?」
私:「動物実験をした時に使ったことを思い出しました。」
C:「先生がバイトに行った時に、どんな麻酔器があるかわからないので、必ず、今みたいにチェックしてくださいね。」
私:「はい。」
C:「じゃあ、時間まで待っててくださいね。」

小芝居を除くと、ここの試験官も雰囲気が良かった。去年の噂にあった意地悪い試験官は外されたのか、とか思える程でした。

〈実技2 硬膜外麻酔〉
この部屋の試験官(EF)についてはあまり印象に残っていませんが、優しい雰囲気だったのは確かです。硬膜外麻酔用の人形(第5胸椎~第5腰椎くらいまでの横向き、背面のみの人形が右側臥位でも左側臥位でもできるように2体)が置いてあり、手袋等が散乱していた。

私:「受験番号○○○○、daijiroと申します。よろしくお願いします。」
E:「はい、よろしくお願いします。ここでは硬膜外麻酔を人形にやってもらいます。症例は胃全摘術予定ですが、まず右側臥位、左側臥位どちらから刺しますか?」
私:「私はモニタを見やすいように右側臥位にして刺します。」
E:「はい、じゃあ座って。」
私:「はい。」
E:「じゃあ、先生はどこから刺しますか?横に研修医がいると思って、何をメルクマールにして探すかも教えながらやってくださいね。」
私:「はい。胃全摘なので、Th8/9から刺します。Jacoby線上の腰椎棘突起がL4またはL3/4なので、そこから頭側に脊椎を触知しながらTh8/9まで探ります。…ここですね。ここを穿刺します。触り方も椅子に座って、人差し指と中指を使って触るようにします。」
E:「手袋が置いてますので、実際に手袋をして、人形に刺してください。」
私:「はい。手袋は不潔にならないよう、触っていいのは内面だけですね。(実際に手袋をつけながら)このようにして、手袋をします。次に消毒ですが、私の施設ではヘキザックアルコールで消毒します。穿刺部位を中心に円を描くように中心から外に向かって消毒します。2回目の消毒は1回目よりやや狭い範囲を消毒し、1回目の消毒より広い範囲を消毒しない様、気をつけます。3回目もやはり2回目より狭い範囲を消毒します。消毒が終わったらドレープをかけます。ドレープは、穴があいているので、その穴の中心を刺入点に一致させるようにして、なおかつ、清潔操作が重要なので不潔にならないようにかけます。次に局所麻酔をします。1%キシロカインに25G針をつけて…。」
E:「経費削減のため、実際のものはないのでやったふりをしてください。」
私:「はい。皮膚を貫いたらすぐに局麻できるように持ち方も気をつけます。そして、私はmedianから刺しますが、皮下組織に膨疹ができるよう、まず2ml程度の局麻をまきます。(局麻をまくって標準語?)そして、棘上靭帯をイメージしながら、もう少し針先を進めて計4ml前後局麻をまきます。次にTuohy針を右手で保持して、皮膚を貫いて皮下組織まで進めます。皮下組織に到達したら両手で持ち、棘上靭帯、棘間靭帯を貫き、黄色靭帯まで来たところで内筒を抜いて生食で満たしたガラスシリンジをつけます。右手でガラスシリンジを押しながら、全体を進め、黄色靭帯を貫き、硬膜外腔に到達すると抵抗が消失し、生食が硬膜外腔に入ります。これが抵抗消失法ですが…。(と針を進めるが、硬膜外腔に達しない!)針先が骨に当たる感触があったら、少しずつ頭側に針先を進め、空いている場所を探ります。」
係:「時間で~す。」

なんと、ゆっくり話しながらやってたため、時間切れになりました!
時間ですとは言われたが、これじゃやばい、と慌てて針先を頭側に振りながら、なんとか抵抗消失法までは完了しました。

E:「じゃあ、時間だから終わりにしましょう。あとはカテを入れるだけだけど、ちゃんと硬膜外腔にきてるし、カテ入れるだけだから大丈夫でしょう。」
私:「わかりました。ありがとうございました。」

しまった~。まさかの時間切れ。
でも、試験官も大丈夫でしょう、と言ってくれたし、優しそうだし、しゃべりがゆっくりだっただけで変な手技的なミスはしてないはずだから、大丈夫だろうと自分に言い聞かせるようにして部屋を退室しました。

〈実技3 DAM
この部屋には上半身だけの人形が置いてあり、AirWay Scopei-Gel、気管支ファイバー、トラキライト、ガムエラスティックブジー等々の各種挿管補助器具や声門上器具が散乱していました。試験官(GH)の印象は少しきつそうなイメージがありましたが、殆ど印象に残っていません。

私:「受験番号○○○○、daijiroと申します。よろしくお願いします。」
G:「よろしく。この症例ですが、全身麻酔導入後、マスク換気はできますが、挿管ができませんでした。どうしますか?」
私:「(どうしますかって、唐突だし、その質問の仕方って微妙じゃね?)マスク換気ができるなら、そんなに焦らなくても大丈夫ですね。まず、純酸素であることを確認して人手を集めます。最悪、筋弛緩をリバースして、覚ますことも考慮しながらほかのデバイスで気道確保します。」
G:「じゃあ、やってください。ここにあるものを使っていいので、好きなものを選択して気道確保をお願いします。」
私:「はい。ではAirWay Scopeで挿管します。挿管チューブのサイズは6.5でいきます。」
G:「研修医に説明するようにしながらお願いしますね。」
私:「はい。まず、挿管チューブのリークテストをやってから、挿管チューブをきちんとセットして、口腔内に入れます。喉頭蓋を持ち上げるイメージで、声門が見えたらチューブを入れます。滑りが悪いとうまく入らないので、潤滑剤をしっかり使うようにします。入ったらAirWay Scopeからチューブをしっかり外してチューブを抜かないように気をつけながらAirWay Scopeを抜きます。あとは、カフを膨らませて聴診します。聴診は最低3箇所で行います。両肺の末梢側と、心窩部で食道挿管の有無と片肺挿管の有無を確認します。この時、末梢で聞かないと、左右差があっても分かりづらいこともあるので気管分岐部近くでは聴診しないようにします。確認が終わればテープで固定して、ベンチレーターに乗せて終わりです。」
G:「はい、いいですね。」

これもゆっくり喋ったせいで、ここで時間切れ。ま、大丈夫だろう。

〈実技4 ACLS
最後の部屋は、前の受験生が終わるまで、別の部屋で待機させられ、次に部屋の前に移動して待機させられた。部屋の前で待機していると部屋の中から笑い声が…。何やら盛り上がっているようだが、雰囲気が悪くないことは確かだ。しかし、そんなに早く終わるのか?
しばらくすると、自分の順番になり、部屋の中に入った。
最後の部屋はACLSだった。既に挿管されている上半身裸の人形が置いてあり、何やら心電図波形が出ているモニターがあった。ここの試験官はIJとする。

私:「受験番号○○○○、daijiroと申します。よろしくお願いします。」
I:「よろしくね。(試験官Jを示しながら)彼は研修医と思ってください。何かあれば彼に的確な指示を出してください。じゃあ、早速だけど、気管内挿管して、全身麻酔をかけている最中、心電図波形はモニターのとおり、橈骨動脈も頚動脈も触知不能、SpO2も出なくなりました。この患者さんの状態は?まずどうする?」
私:「心電図波形は出ているけど動脈触知不能なので、PEAです。CPR開始します。」
I「じゃあ、やって。」
私:「はい。」

おもむろに心臓マッサージを開始。この状態で話しかけられてもなんとも答えられないぞ。

I:「心臓マッサージからやるの?」
私:「はあ、はあ。(心マしながらは話せないって)はい。2010からは心臓マッサージから開始するよう変わりましたのでまず心マからやります。さらに、この方は全身麻酔中なので、筋弛緩薬投与により呼吸はしていないと考えられますので。」
I:「じゃあ、深さとかは?」
私:「深さは5cm、押す場所は胸骨上で両乳頭を結んだ線上、1分間に100回のリズムで押すのと、押したら胸郭が充分もどるよう気をつけることと、胸骨圧迫中断は最低限にして、できれば10秒以内が推奨されています。」
I:「呼吸管理はどうする?」
私:「既に挿管されているので1分間に6~8回のペースで。心マとは非同期でいいのでベンチレーターの設定をしてください。一回換気量は500mlで様子を見ます。あとはカプノグラムやSpO2等を見ながら適宜調整していきます。」
I:「薬物投与は?」
私:「2010からはPEAではアトロピンのルーチン投与は推奨されなくなったので、アトロピン投与は行いません。」
I:「よく勉強してるね。まあ、ACLSはヤマだからね。はい、じゃあここで波形が変わりました。」

モニターに目をやるとVTまたはVFの波形に変化していた。

I:「こんな波形になったけどどうする?」
私:「VTまたはVFなので、除細動を行います。準備をするので、2分間心臓マッサージを変わってください。」
J:「はい、じゃあ、同じペースで心マします。」
私:「この除細動器は2相式なので120-200Jで除細動を行いますが、メモリで150Jが推奨されているようなので、150Jで除細動を行います。」

と言いながら、ダイヤルを150Jに合わせ、パッドを掴んで充電ボタンを押した。

私:「はい、充電完了しましたので、皆さん離れてください。(みんなが離れているのを大袈裟に確認しながら)除細動します。(バチッ)」
I:「はい、いいですよ。これで終わりです。」
私:「ありがとうございました。」

ACLSは本当にあっさり終わり、かなり時間が余った。
なるほど。前の受験生の笑い声が聞こえた理由が少しわかった。

〈感想〉
ラッキーなことに、問題も難しくなく試験官も優しい人たちばかりで終わった直後から口頭諮問と実技に関しては受かる自信はありました。ただ、後に後輩や知り合いと情報交換をすると、自分の問題がいかに簡単かがわかり、逆に採点基準が厳しくなるとやばいな、とは思いました。
そんな心配は杞憂だったようで、無事、3科目とも合格し、晴れて専門医を名乗れるようになったようです。来年以降受験する方も頑張ってください。

・・・・・・・・・(引用終了)・・・・・・・・・・・・・

とても詳細でわかりやすい体験記、ありがとうございます!





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