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2012年5月23日水曜日

まとめ:肝移植(ざっくり)


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基礎知識
・劇症肝炎、肝臓癌、末期肝不全患者で適応がある場合に行われる。
循環動態は亢進状態にあり、心係数の上昇末梢血管抵抗の低下が特徴。肺血流量も増加するため、肺高血圧は高くなりがち。
・手術は前無肝期(レシピエントの肝臓摘出まで)、無肝期(ドナー肝との血管吻合が終了し、再灌流するまで)、後無肝期(再灌流開始以降)に分けられる。
・大開腹の長時間手術に多くの場合大量出血を伴うので、術中循環管理は大変・・。
・特に肝硬変患者では側副血行路が発達しているため大量出血を伴う。一方劇症肝炎の場合は肝臟が萎縮しており、側副血行路もないため無輸血、短時間で終わることもある。


□術前チェックポイント
術前評価は肝機能障害、肝硬変患者に準じるこちらを参照。
・Child-Pugh分類
・凝固系、血小板チェック
・食道静脈瘤チェック(あれば胃管挿入は原則行わない)
・輸血準備の確認。
・とれそうな大量輸血用の末梢静脈のチェック
・etc...

□麻酔法・モニター
・麻酔法は慣れた方法で。腹水がある場合が多いため、迅速導入がよいか。
・分布容積が増大しているため、麻酔薬の初回必要投与量は増加する。しかし肝機能障害により代謝は低下していることが多いため、追加投与は少量ずつ慎重に行う(筋弛緩薬など)。
・通常術前より血小板減少や凝固能障害があり、術中も大量出血などで凝固異常をきたすので、硬膜外麻酔は行わない。術後はフェンタニルなどで強力な鎮痛を行う。
・血行動態のモニタリングは動脈ライン(フロートラック®)や中心静脈ライン(プリセップ®)あるいは肺動脈カテーテルを用いる。
・大量出血が予想されるため、シースや16G以上の末梢ラインを複数本留置する。
・細胞外液は重炭酸リンゲルがよく用いられる。
・適宜輸血、アシドーシスや低カルシウム血症の補正を行う。
・大開腹長時間手術のため低体温をきたしやすいので、術中はしっかりと保温・加温に努める。
・肺内シャントなどの存在により低酸素血症が存在することが多いため、酸素濃度上昇や適切なPEEPで対処する。

□手術の進行段階と麻酔管理の注意点
前無肝期
・レシピエントの肝臟を摘出するまで。
・肝臟の代謝活性は体温の維持に大きく関与しているため、積極的な保温、加温を行う(温かい輸液や輸血、温風式加温装置など)。
カリウム、ナトリウム、カルシウム濃度を適切に維持する。
・大量出血は肝硬変があればほぼ必発であるため、急速輸血装置など用いながら凝固能及び貧血を適宜補正する。
・急速輸血と肝腎症候群の影響もあいまって高カリウム血症を来しうるため、頻回に採血しチェック、補正を行う。
無肝期
・大きな目標は、血行動態の安定と再灌流症候群に備えること。
・下大静脈遮断を行うと静脈還流量が大きく減少し、高度の低血圧を来す。
・大腿静脈−腋窩静脈バイパスを置くこともある。
・進行性の代謝性アシドーシスが生じる。
・血糖は高血糖、低血糖どちらも起こしうる(実際は糖の投与などで高血糖になることが多い)
高カリウム血症、低カルシウム血症、代謝性アシドーシスの適宜補正。重炭酸ナトリウム(メイロン®)の投与によりナトリウム濃度上昇を認める場合は慎重に5%ブドウ糖で補正することもある。
・血管の遮断解除とそれによる再灌流症候群に備えて、カリウムの調整と血管内容量を回復させておく。
・ドナー臓器の保存液はカリウムを多量に含み、かつ低温のため再灌流前には復温と、軽度低カリウムに補正しておく(3.5mEq/l程度)。
 ●再灌流症候群とは?
・再灌流後に高度の血圧低下(循環虚脱)が生じる。
・ドナー臓器からの保護液によるカリウムの急激な上昇、体温低下、急性の代謝性アシドーシス、血管作動性物質の放出により、徐脈、心筋抑制、全身血管拡張による循環虚脱が生じる。アドレナリンなどの循環作動薬、カルシウムなどで対処する。大量輸液は、心筋抑制による右心系の充満圧上昇を悪化させる可能性があるので注意。
後無肝期
・血圧の上昇、低下などが循環動態の変化と凝固異常により生じうる。尿量は回復してくることが多い。ドナー肝の機能回復にはある程度の時間が必要であるため、凝固障害は適宜FFP投与で補正する。

□移植肝臟の機能回復の指標
・イオン化カルシウムの維持(補充なしで)
・代謝性アシドーシスの改善
・体温の回復
・胆汁酸性(閉腹前に)
・凝固能の正常化 など

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